狂牛病の心配のない興農ファーム牛肉、応援特別セール!

2001年11月4週号

 

興農ファームでは、オルター以外の団体へも牛肉を出荷されています。その出荷先の一つ、ある大きな生協で、狂牛病騒ぎのため、売上が半分程度に落ち込みました。
 生協では、組合員へ興農ファームの取り組みの努力をこれまで十分に説明しておらず、また一般流通の牛肉も扱い続けています。そのため、不信を払拭できず、狂牛病騒ぎに巻き込まれたのです。そのため興農ファームでは、国、道などに融資などの応援を要請していますが、一番いい解決は牛肉を安定的に供給し続けることなのです。
 オルターでは「興農ファームの牛肉は、国内の牛肉で最も安全な牛肉で、もちろん狂牛病の心配もない」と評価しています。こういうときにはむしろ、その売上を伸ばせるものなのです。そこで皆さまへのお願いなのですが、ご自身でご注文なさるのはもちろんのことですが、会員外の友人・知人に興農ファームの牛肉をおすすめしていただけないかということです。
 生産者のピンチは、すなわち、オルターのピンチです。生産者を守ることができて、食の安全性も獲得できるものなのです。興農ファームの出荷が安定できるように、ぜひともご協力をいただきますよう、お願いいたします。
 なお、興農ファームの牛肉は脂身が少なく、部位によっては少し堅い赤身牛肉であるという特徴を十分にご説明ください。
●興農ファームの牛肉は、狂牛病の心配はありません。
 興農ファームの牛肉についてのエサ、買い方、市販品の問題点などは、オルターカタログ2000年8月第2週表紙をご覧下さい。
 ここでは、狂牛病関連の情報を整理します。
●興農ファームのエサに肉骨粉は使っていません。
 肉骨粉を含め、動物性飼料はこれまでにも一切使用しておりません。また、ポストハーベスト農薬、遺伝子組換えも排除しています。

―興農ファーム飼料原料―
①トウモロコシ(輸入物、NON-GMO)…30~44%
②大麦(輸入物)…………………10~22%
③大豆(北海道産クズ大豆)………3.5~16%
④糖蜜(北海道産ビート絞り粕)……1.5~4%
⑤ルーサンペレット(輸入物)……6~9%
⑥小麦(北海道産くず小麦)…………11~23%
⑦アマニ粕(輸入物)……………………8~10%
⑧燕麦(輸入物)………………8~9.5%
⑨でんぷん粕(北海道産ジャガイモ粕)
⑩米ぬか(北海道産)
⑪牧草(自家産有機栽培)………10%以上
⑫水(BMW技術)
 
 興農ファームでは、昨年の10月より、上記のような飼料設計をしています。昨年は米、小麦が作柄が悪く、輸入の原料が増えました。今年は豊作の見通しなので、元のレベルへ戻せそうとのことです。国産の原料を極力使っていくため、毎年毎年このような工夫をしていただいています。
 上記の原料以外に、塩、ハイホス(第1リン酸カルシウムを糖蜜で混ぜ、ペレット化したもの)、メイラック(粉ミルク:子牛用)も使っています。ちなみに、第2リン酸カルシウムは、輸入の牛の角が原料なので使っていません。

●興農ファームの子牛の購入についても心配ありません。
 興農ファームでは、子牛はすべて顔の見える標津農協管内の生産者から購入しています。標津農協管内では、肉骨粉の使用がなかったことを家畜衛生保険所の聞き取り調査で確認されています。もし、万が一不測のことで肉骨粉が与えられたとしても、狂牛病の母子感染は知られておりません。
 子牛は生後10日で興農ファームに引き取られ、ミルクから育てられます。生後10日の段階では、まだミルクしか摂取せず、親元に置いたとしても、親用の飼料を口にすることはまったくありません。つまり、肉骨粉を摂取する可能性はまったくないのです。
 プリオン病に詳しい山内一也・東京大学名誉教授によれば、牛の体内に一定量の病原体が蓄積されなければ、狂牛病の感染は起こらないそうです。感染力を十分に持つ量に達するには、牛で約3年(30ヶ月)はかかるとのことです。もしもその一定量に達した牛は、たとえ外見は健康そうに見えても、感染するとのことです。したがって、興農ファームのYBB(若年齢肥育牛)のように生後16~18ヶ月で出荷する牛には、感染牛が万が一紛れ込んでいたとしても、感染力はないことになります。
 興農ファームの牛も10月18日以降、狂牛病検査が実施されますが、本来興農ファームの牛は30ヶ月齢以上で実施される検査は必要とされないものなのです。
 なお、オルターでは興農ファームと協力して黒毛和牛(ブラックアンガス+黒毛和牛)を自家繁殖で育成しています。このオリジナルビーフの出荷が、この秋から始まる予定です。さらによく目の行き届いた牛肉が実現します。

■ 屠場での汚染や混同はありません ■

 興農ファームの牛を屠殺しているのは、オランダ製の最新鋭のシステムを誇る北海道畜産公社北見営業所です。O-157に関してカタログ2000年8月第2週表紙で説明したように、食道結索、直腸結索を国内で最も早くから実施している工場です。ここでは屠殺からブロック肉まで、フックに吊るしたままで、ドライシステム(水を使わない)で解体されています。この途中、狂牛病特定汚染部位(脳、脊髄、回腸、リンパ節)などへさばきナイフが当たったりしたものを他の個体と紛れて使用されるような心配はありません。また、興農ファームの牛が、他の牧場の牛と混同される心配もありません。
●やっぱり日本でも始まった 狂 牛 病
農水省は9月10日千葉県で5歳の乳牛1頭に狂牛病の疑いがあると発表し、英国獣医研究所での検査で確定診断されました。
 狂牛病は1986年に最初にイギリスで確認されました。羊のスクレイピー(狂羊病)のプリオンが牛に感染したことによるという説が有力。
 乳牛に対し、乳量を増やす目的で牛成長ホルモンの注射を始めましたが、乳量を増やすためには牛に高蛋白のエサを与えなければなりませんでした。
 その蛋白質飼料としてレンダリングプラント(畜体解体工場)からの肉骨粉が使われました。そのレンダリングプラントへはスクレイピーの羊が持ち込まれていたのでした。この狂羊病の脳から狂牛病が発生したと考えられています。さらに狂牛病の牛が再びレンダリングプラントに回り、感染の悪循環が爆発的に始まりました。
5年前の1996年にイギリス厚生省は狂牛病が人に感染する恐れがあると発表し、感染の疑いのある牛350万頭の焼却処分を命じました。それまでに老人に発症していたクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)とは異なる脳波を示す変異型の新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)が確認されて、その原因が狂牛病の牛肉を食べたことが原因だと考えられたのでした。国際獣疫事務局(OIE)によると狂牛病が発生しているのは、18の国と地域で、18万数千頭におよび、その大半がイギリスで、その他のヨーロッパ、カナダ、オマーンなどに広がっています。世界保健機構(WHO)によると今年6月までに確認された人の新変異型ヤコブ病は105例、その内イギリスが101例、フランス3例、アイルランド1例と報告されています。イギリス厚生省は最終的に16万人くらいの死者だと予想しています。しかし、リチャード・レイシー博士は2010年ごろよりイギリスでは狂牛病の死者が毎年50万人に達するだろうと、予想しています。
 イギリスでは肉骨粉の使用を禁止するとともに、屠殺された肉牛には出荷前検査を実施し、狂牛病感染が確認されれば焼却処分しています。焼却処分された牛の頭数は5年前の焼却以来すでに400万頭に達しています。
 日本への感染ルートとして、①感染の疑いのある脳を含む畜産物が330トンイギリスから直接輸入されたことが確認されている。②オーストラリアを経由してイギリスの牛肉が日本に入ってきている恐れがある。③イギリスで問題になったあと肉骨粉をイタリア産、ベルギー産などの肉骨粉へ切り替えて日本国内で使用していたが、後日これらの国々も汚染地域であると指定されている。④リスクは比較的小さいが、感染した牛肉をアメリカから輸入した、などが考えられ、国内での人の発症も散発例であろうが時間の問題と考えられていました。人における潜伏期間は3~30年と考えられています。
 狂牛病原因プリオンは、脳、扁桃、脊髄、回腸などで確認されます。プリオンは600℃の加熱でもその病原性を失わないとされています。したがって、このような部位を食べることはもちろんやめなければなりません。牛肉が汚染されるのは、屠殺時に脳に棒状の鉄砲を打ち込むなどの方法をとっているために、飛び散った脳組織が一部の肉に付着していたり、あるいは解体時に使う道具などからプリオンのある脊髄やリンパ節などの汚染が移行することが考えられます。したがって、狂牛病の牛の肉を食べるのは危険といわざるをえず、イギリスでは検査で感染が確認された牛は焼却されているのです。
 牛が狂牛病に感染すると、2~8年で発症するといわれています。当然、発症していないキャリアーの牛からも、およそ30ヶ月齢になると人が感染する危険があります。通常、肉牛は2年数ヶ月で食肉に回されますが、発症しないうちに食べさせられたケースが考えられます。豚や鶏は安全であるかのような宣伝がありますが、猫にも感染しているものが感染しないと考えるのは早計だろうと思います。肉骨粉を食べさせられた豚や鶏も要注意と考えておいたほうが安全です。
 また、牛乳も同様で、まったく心配ないと言うのも、言い過ぎかもしれません。肉骨粉として食べたプリオンが牛の脳などへ血流で到達しているわけですので、同じ血流で生まれる牛乳にまったく心配がないというのは言い過ぎでしょう。分からないことを安全とは言えないのです。ただし、現在までのところ、牛乳、豚肉、鶏肉での発症例は確認されていないし、その危険性はあってもごく小さいとは言えると思います。
 ヨーロッパから日本への汚染された可能性のある肉骨粉の輸入は毎年100トン前後でした。日本ではこれら動物性蛋白を乳牛以外に肉牛にも配合していたようで、老齢化して給餌回数を減らしたい畜産農家が利用していたようです。
 いずれにしても、今回の千葉の狂牛病乳牛は氷山の一角であることは間違いありません。底辺がどれくらい拡大しているかは分かっていません。10月1日より肉骨粉の輸入・使用は禁止(豚、鶏は10月23日に使用が解禁されました)。
10月18日以降すべての屠殺牛に対する検査が実施されています。全頭検査期間の3月末までは、屠場から狂牛病に感染した牛肉が出て行くことは一応なくなると考えてよいと思います。しかし、問題は冷凍倉庫に売れ残った在庫の山と、検査されなくなる3月以降に出荷される牛肉です。国の安全宣言の影にまぎれて、これら安全確認のなされていない牛肉も市場に出回ることは避けられません。また、安い肉を原材料に使いたがるハンバーグ、コロッケなど牛肉加工食品も数年間は誤っても市販品を口に入れないことです。

―文責 西川栄郎―

ページの先頭へ