今どき珍しく鮮魚からか蒲鉾を作っている 岡久蒲鉾店

2000年10月4週号

 

昔の蒲鉾店では、必ずといってよいほど魚臭が漂っていたことをご記憶のことと思います。あたりまえのように魚をねりものの原料としていた時代があったのです。しかし、そんな風景は現在どこの蒲鉾屋にもありません。なぜなら、原料がすっかり手間のかからないすり身を使うようになっているからです。そして後述するように食品の中でも最も劣悪で危険なものと成り果ててしまっているのです。
 岡久宏さんは昔かたぎの頑固な職人さんです。代表取締役は、その息子さんの雅昭さんです。私たちが20年以上前に岡久宏さんに出会った頃からずっと鮮魚を原料とされてきました。徳島市内の新町川に沿った工場で、魚を使ったあとの水を廃水処理できる設備をされていたから、鮮魚を使うことが可能だったのです。他の蒲鉾店が鮮魚を使おうとしてもまず、この廃水処理施設に費用がかかり過ぎて諦めてしまう状況があるのです。
 岡久雅昭さんは「練り製品は魚を使うのですが、その魚よりおいしいものでなければ意味がない」とおっしゃいます。そして、私たちとの出会いの中で、副原料にも安全な調味料を使う今日の製品に到達されたのです。

岡久雅昭さん、岡久宏さん
岡久蒲鉾店のねり製品
ねり製品の原料の魚は、
①エソ、グチ、タチウオ、アジ、ボーゼ、コチ、トラハゼ、シタビラメ、ハモ
 などの徳島近海の鮮魚です。その魚は毎朝4時過ぎに徳島の市場で仕入れ、
 早朝から家族総出で、相当手間のかかる手作業で3枚におろして、石臼で練り上げています。
 しけなどで魚が不足するような場合は、数日分冷凍することもあります。
 但し、長く冷凍した魚は魚肉がパサパサになってしまいますので、その都度鮮魚を使うのが原則です。
この原料の魚の確保が一番苦労されているところです。日によって獲れる魚に違いがありますので、いつも同じ味というわけにはいかないのです。
 この自家製の鮮魚から作ったすり身に以下のような、安全な調味料で味付けをしているのです。
 もちろん、化学調味料、合成保存料、合成着色料、発色剤、リン酸など食品添加物など一切使っていません。
②三河みりん(1998年12月第1週カタログ表紙参照)
③海の精(海水塩、2000年4月第4週カタログ表紙参照)
④種子島甘蔗分蜜糖(2000年4月第1週カタログ表紙参照)
⑤日高昆布からの自家製だし
⑥じゃがいもでんぷん(北海道産、非遺伝子組換え)
⑦菜種油(石橋製油…非遺伝子組換えオーストラリア産菜種、圧搾一番搾り)
⑧野菜、その他(ごぼう、人参、ジャガイモ、しょうが、モロヘイヤ、一味唐辛子、モンゴイカげそ)…よりこだわったものに変えていく方向はもたれていますが、残念ながら現在は一般市販品です。

<オススメです>
品名    原料
板かまぼこ ①~⑤(無澱粉)
焼かまぼこ ①~⑤(無澱粉)
ちくわ ①~⑥
平てん ①~⑦
球てん ①~⑦

<暫定取扱い品>
オルター仕様では通常は取扱わないレベルの原料⑧が使われています。但し、国内の現状で同等以上の品物がないため、取扱います。
品名    原料
おでんセット ①~⑦、ごぼう
やさい天 ①~⑦、ごぼう、人参
じゃこ天 ①~⑦、しょうが
モロヘイヤ天 ①~⑦、モロヘイヤ
ピリカラ天 ①~⑦、一味唐辛子
ひじき天 ①~⑦、ひじき
ごま天 ①~⑦、黒ごま
ごぼう巻 ①~⑦、ごぼう
イカナゲット ①~⑦、モンゴイカゲソ

【食べ方】
できるだけ加熱しないで(80℃くらいまでがよい)、生で食べられるのがおすすめ。おでんの場合でも、最後に入れてあまり煮込まないようにされるのがおいしく食べるコツです。

市販のねり製品の問題
 市販では加工に手間がかかり、廃水処理施設も必要な鮮魚を原料にすることは、ほとんどありえません。冷凍技術の発達とともに、ねり製品の原料は船上加工したタラなどのスリ身になってしまいました。このスリ身にはキャリーオーバーの食品添加物が多用されています。
パサパサにならないようにリン酸塩(ピロリン酸塩など)、色が変色しないように酸化防止剤が必須です。また結着性を高めるため、でんぷん(小麦粉でんぷん・大豆蛋白…ポストハーベスト農薬、じゃがいもでんぷん…遺伝子組換え)も使われています。
市販のねり製品をおでんにした時にぶくぶく膨れるのは、スリ身にこのでんぷん(元身に対して10~12%、加水後で5~6%)が使われているからです。このほか、スリ身が膨れる理由には機械でねったスリ身の蛋白質自体の性質もあります。
岡久さんのところでは、かまぼこは無澱粉で、それ以外の品物には味わいを考慮してじゃがいもでんぷんを品物によって元身の7~8%(最終製品の5~6%)使っています。
市販のねり製品には原料表示「タイ」などと書いて、高級イメージを与えている食品もありますが、それはイトヨリなどのタイ科のスリ身を使っているだけです。
次に、水による増量も心配です。最大で原料のスリ身と同量の水を加水することも行われています。そうすれば非常に安価なちくわだって作り出せるのです。無添加を謳うねり製品も、キャリーオーバーをほっかむりして、こういうスリ身を原料にしていることが多いのです。
副原料に使われる塩、砂糖、醤油、みりん(?)も安くて粗悪なものが一般的。その上、味付けにアミノ酸(脳障害)、発酵調味料、ブドウ糖(遺伝子組換え)、人工甘味料、甘草、ステビア(催奇形性)、辛子粉、本ワサビ、香辛料、野菜エキス、魚介エキス、酒、酸味料などが使われています。また、すわり促進効果(ねばり)、色、つやのために卵白、増量、つや、食感のためにラード(エサや薬漬け畜産が問題)、そのほか豆腐用凝固剤(塩化マグネシウム)、コラーゲン、乳蛋白質、増粘多糖類、
保存剤としてソルビン酸カリウム、
発色剤として亜硝酸ナトリウム、
酸化防止剤としてビタミンC
pH調整剤として炭酸カルシウム、炭酸カリウム、
着色剤として赤色3号、102号、104号、106号、青色1号、
黄色4号、カラメル、コチニール、パプリカ色素、
アナトー色素、紅麹、クチナシ、
カロチノイド・ラック(カイガラムシの赤色色素)
などが使われています。
さらに野菜には農薬、冷凍魚介類には酸化防止剤などの薬品が使われています。
CMで「地球にやさしい、合成保存料無添加」などと謳っているメーカーのものも、合成保存料はたとえ使わなくても、品質改良剤プロピレングライコール(毒入り輸入ワインで問題となったジエチレングライコールより毒性が強いと思われる)のような防腐効果があるものを使えばよいわけで、一切無添加ということとはかけ離れています。

―文責 西川栄郎―

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