有機栽培、あゆみの会の無農薬野菜

1999年10月3週号

 

微生物を使わない有機農業は有機農業でないと思う」とオルターの会員集会で発言なさったのは茨城県の「有機栽培あゆみの会」の代表斎藤公雄さんでした。
 茨城県はたまごの会や有機農業研究会のメンバーが活躍する、有機農業の盛んなところ。その気風を受けて、あゆみの会は有効微生物などを活かした有機農業に取り組み、その仲間も370戸に増えています。
 あゆみの会は10年前に農薬に依存しすぎる農業や減反政策に反発して、米作農家5人が結成しました。モンスーン気候やミネラルの少ない日本の土壌に適した有機栽培の技術を農家に指導して、仲間が増えてきました。できるだけ近場の提携農家との関係を大切にしているオルター大阪にとっても、品物が揃わないときは、いつも強い味方になっていただいているのです。最近ではその発酵技術を畜産やハム加工など多方面に提供し、指導なさっています。

あゆみの会の無農薬有機栽培の野菜
『あゆみの会』の栽培基準は
・有機堆肥を使うこと。
 土づくりには、土質と作柄にあった堆肥作りが必要。
・土壌消毒はしない。
 土中の微生物を殺す、有機農業とは相反する行為。
・除草剤はまかないこと。
 畑だけではなく環境にも影響を与えます。
・基本的に反農薬のこと。ただしやむを得ず農薬を使用する場合、
 その判断は子育てと同様に作物の母親である農家にお任せしますが、
 何のために、どのような農薬を何回使用したのか必ず報告すること。
 お互いに納得できる信頼関係こそ基本です。
・自家食用と分けないこと。
 残念ながら多くの農家はきれいな市場出荷用の野菜や果物と、
 安全な自家食用のものを区別して生産せざるを得ないのです。

 有機栽培は、無農薬で有機肥料をたくさん使えばよいということではなく、土壌内に存在する微生物や植物をいかに活性化させるかにかかっています。すなわち土作りが基本です。したがって有機肥料としての堆肥もふん尿などは必ず、発酵させて有効菌を増やして使っています。腐敗させてはいけないのです。
 あゆみの会では以下のような様々な有機資材を工夫して使っています。もちろん生産者や作物によってそれぞれの工夫があります。
 EMボカシ、オリジナル活性液、木炭、カニ殻、海藻、骨粉、
 発酵肥料、ヒューマス水、油粕、魚粕、米ぬか
無農薬の工夫は主としてこの有効微生物を利用する土作りです。他にも防虫ネット、木酢液、活性キトサン、サンライフ、発酵ストチュー、ニンニク液、アグリポプラス、パパイヤ酵素、オリジナル活性液など天然の殺菌、殺虫剤を工夫しています。
 虫が発生したときには酢と焼酎などから作るアルコール系の「エステル」を作物にかけたりしています。それは虫にアルコールを分解する酵素がないことから、かけた作物を虫が食べたら死んでしまうからです。

 あゆみの会の野菜はこのようにほとんどが無農薬ですが、メロン、すいかなど作物によってはあゆみの会が微農薬栽培と名付けている最少限度の化学農薬を使っているものもあり、オルターでは低農薬と表示しています。
 あゆみの会では月1回農家の勉強会をして、何が必要か何がだめなのかを考えています。斎藤さんは「最終的には食べて病気が治るような作物を目指します」とおっしゃっています。

市販の野菜の問題点
 多収穫のために化学肥料に依存するため、亜硝酸態窒素が多く含まれています。このアクはにが味・えぐ味・しぶ味などまずい原因だけでなく、その成分は血液中のヘモグロビンを破壊するため貧血の原因ともなっています。また電子レンジでの料理や口で咀嚼する段階で、蛋白質と結びついてジメチルニトロソアミンなど発ガン物質の発生の原因ともなります。このアクの多い分、栄養価が少なく、科学技術庁の調査でここ20年、日本の野菜の栄養価が激減している原因です。ゆがくとこのアクが煮汁ににげて、すっかりぺしゃんこのカサとなり、結局は割高な野菜なのです。
 化学肥料を使えば、作物も土も病弱となります。その結果が農薬使用につながっているのです。出荷直前まで農薬を使用しているケースもあり、最近では海外からポストハーベスト農薬が使われた野菜・果物までが続々とスーパーなどに登場してきているのです。
 市販の野菜は国の基準(その基準もずいぶん甘い)を超える農薬が残留しているものが珍しくありません。また有機を名乗っていても、油カス、骨粉を使っただけや全く表示だけしているひどいものがあって、国のガイドライン作りとなっています。しかしこのガイドラインも永年有機栽培に取り組んできた生産者の立場に立つものではなく矛盾の多いものです。有機肥料を使いながらも、土壌消毒や除草剤しているケースもあります。無農薬、有機栽培はその前提としてまず「顔の見える関係=提携」「情報公開」が必要なのです。
 また木酢液を使う農家が増えていますが、あゆみの会では、その木酢液の原料に注意を呼びかけておられます。なぜなら、建築廃材の捨て場に困った業者が、炭や木酢液のブームに目をつけ、建築廃材を炭や木酢液にして安く売り始めているからです。建築材などには白アリ用のヒ素が使われているものがあり、そのヒ素が木酢液として畑にふりかけられたりしているからです。あゆみの会では、農薬資材の重金属汚染なども分析して注意深く使用されており、その過程で見つけられたことです。だから資材を自分で作って、畑に自分の手で使うことを心掛けています。

―文責 西川栄郎―

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