X'masに南アフリカ非白人地場産業を支援するマーシーのワインを飲みませんか。

1999年12月3週号

 

マーシー(有)の代表山下いつこさんは元は百貨店の仕入れ担当。しかし、もっと世の中の役に立つ仕事をしたいと第三世界ショップ(オルターで扱っているコーヒー)やトレテス(オルターで扱っている乾燥コンニャク)を経て、第3世界や障害者などを支援するマーシー(有)を設立されました。マーシーとは「ありがたいこと」という意味があります。今回は南アフリカのワインと、手作りで年賀状を作れる「紙漉きキット」(裏表紙で紹介しています)のご紹介です。南アフリカは、元々ヨーロッパで愛用されたおいしいワインの産地の一つです。白人が入植した17世紀からぶどうの栽培、ワインの生産が行われてきました。値段のわりに質の良いワインです。民族隔離政策(アパルトヘイト)の終焉とともに、非白人の人々の自助努力が求められている国です。人種ごとの生活水準の大きなギャップを少しでも改善することが、この国の大きな課題です。この国のおいしいワインを飲みながら第3世界の自立の応援の手助けができればと思います。今回は以下の3メーカーのワインを紹介します。まだ、原料にするぶどうの作り方はこれから有機農業へ向けて努力をしていただかないといけない段階ではありますが、ソムリエの評価は「ジューシーでテーブルワインとしてはおいしい」とのことです。

Klawervlei(クローワーフレイ)
ワイナリー名:Klawervlei WineEstate
生産地名:Stellenbosch(ステレンボッシュ)
企業理念:減農薬によるワイン作り。
使用ぶどう:シェニンブラン100%。低農薬・手摘み。過去に農薬を使用したのは栽培を始めてから、この6年間で1999年7月の1回のみ。
添加物:活性亜硫酸(微量)のみ(その他ソルビン酸などなし)
ワイナリープロフィール:ここは、南アフリカでも一般的に最も上質なワインが生産されると言われているステレンボッシュにある、こじんまりとしたワイン農家。「ナチュラルとピュア」が、ここのオーナーのワイン作りの哲学。化学肥料は一切使わず、肥沃な土地、暖かい太陽の日差し、海から吹く涼しい風など、自然の恵みを大事に、そして有効に使うことを心掛けています。例えば、ブドウの栽培においては、トレリスを使わないブッシュヴァイン。スプリンクラーなど灌漑用水も用いません。農薬をまくかわりに、水にニンニクを24時間漬けておいた水をまくことによって、ブドウに虫が付かないようにしているなど徹底して作られています。そして、ブドウの栽培から収穫、ワインの生産にいたるまで、大型機械を使わず、全ての工程が手作業で丁寧に行われています。こだわりを持ったオーナー、「ウチは、ワインを大量生産するようなワイン工場ではなく、とても小さなワイン農家だ」と、いつも言い、また、それを誇りにしています。ここのワインを一言で言うならば、最も自然なワインを作ることに徹底した職人が作り出したワインと言えます。マーケット主義の南アフリカのワイナリーの中において、貴重なワイナリーだと言えます。ブドウの種類は白はシェニンブランです。

シェニンブラン95(白)特徴:やや辛口、フルーティであっさりした味わい
商品に合う料理:シーフード料理
メルロー99(赤)
特徴:まろやか、のどごしすっきり。やや辛口、バランスのとれた味わい。トマトソースの料理や肉料理に合う。
クラシック・ドライ・ホワイト98(白)
特徴:さっぱりとした辛口、軽くてフルーティな後味。シーフード料理やサラダに合う。

New Beginnings(ニュービギニングス)
ワイナリー名:Nelson’s Creek Wine Estate
生産地名:Paarl
企業理念:非白人達による非白人のためのワイン作り。
使用ブドウ:メルロー99はメルロー100%。クラシック・ドライ・ホワイトはリシュリンク72.5%、パラミノ27.5%。手摘み。
添加物:活性亜硫酸(微量)
ワイナリープロフィール:1998年、南アフリカで初の黒人によるワイン生産に成功。これは、ネルソン氏(Nelson’s Creek Wine Estateのオーナー)の新生南アフリカへの考えが大きく影響したものによる。
1988年当時、南アフリカはアパルトヘイト政策の終焉が近づき、新たな道に歩み出そうとしていた。ネルソン氏は、新生南アフリカを迎えるに当たり、原住民である黒人たちと手を取り合い、共存共栄の道を選ぼうと決心する。1989年、ネルソン氏は破産した農場を買い上げ、その労働者たちにあるひとつの約束をする。それは、ワイン生産で優勝した暁には、報酬を与えるというものであった。8年後の1996年、ネルソン氏のワイン農園、ネルソンズクリークのシャルドネは南アフリカで優勝し、約束通り1997年に彼の労働者(17人)に9ヘクタール(25エーカー)を寄贈し、南アフリカで新しい画期的な歴史を作った。労働者たちは喜んで彼のプレゼントを受け、クレインビギン(「小さな始まり」という意味。現在はニュービギニングス「新しい始まり」と改名)農業組合を設立した。1998年初頭には、非白人によって生産された最初のワインが出来上がり、南アフリカ全国のスーパーの棚に並ぶこととなった。ワインの販売利益の大半は労働者の給料やボーナスに還元されており、今まで持つことの出来なかった家具やテレビが買えたと労働者たちは喜んでいる。また、家や教育費、その他の社会的サービスなどにもあてられている。この挑戦は単に労働者の生活水準向上の為の機会や試みだけではなく、新しい南アフリカの、また、世界中の国や地域に向けて、わずかの犠牲と努力で平和と和解が実現するということを示す例でもある。

シャルドネ99(白)特徴:すっきりとした辛口。かんきつ類のハシバミの実の味でレモンの香り。フルボディでしっかりしたクリームのような濃さで仕上げている。バランスの良い仕上がりになっている。
商品に合う料理:シーフード、または、ワインのみでもOK。

THANDI(タンディ)
ワイナリー名:Lebanon Fruit Farm Trust(Paul Cluver Wine Estate)
生産地名:Elgin
企業理念:生産者支援と地域開発プロジェクト
使用ぶどう:シャルドネ100%。手摘み。
添加物:活性亜硫酸(微量)
ワイナリープロフィール:Paul Cluver Wine Estateを核とするLebanon Fruit Farmは、次の3つの団体から構成されています。①デ・ラスト果物農園②その農園の労働者家族(115世帯)が集まったレバノンコミュニティ③農業事業家を育成している企業、ソロボ。ここで生産されたワインの銘柄が「タンディ」です。ここのワイナリーの特徴は、果物栽培に適したエルジンという地域で栽培された上質のブドウを、大型機械を使わず、一つ一つのワイン生産の工程を手作業で行なわれています。また、上質で仕上がりの良いワインを作るため、ワインの熟成に使われる樽はフランスの5つのメーカーから取り寄せ、組み合わせて使っているというこだわりようです。また、ワインメーカー、マーケティング、運営・管理など将来の人材を育てるために、企業や地域が出資して非白人の貧しくても志のある人に奨学金を与えて勉強させるなど、バックアップ体制もしっかりしています。そしてここは何よりも、白人も非白人も皆が明るい笑顔ととても気持ちのいい対応で、同じレベルで一緒になって働いている新生南アフリカの目指すべき「レインボーネーション(虹の国)」の趣旨を実現化したようなワイナリーです。現在は、ワイン生産に必要な機械や機材などはデ・ラスト果物農園の中にあるポールクルーバーというワイナリーの協力で、様々な機材を使わせてもらっていますが、そういった機械も将来的にはワイン生産の利益を使って購入し、完全に独立することを計画しています。レバノン・フルーツ・ファーム・トラストのコンセプトは、①アフリカの地場産業である良質のワインとフルーツを輸出すること。②南アフリカへのイメージを変えてもらうこと。③非白人労働者に対する仕事作りやチャンス作り。④ワイン生産によってもたらされる利益で、家や教会、保育園などを建設し、労働環境を確保すること。です。このようなコンセプトを基に、地域の自治、教育、医療、福祉、公共設備、治安の向上などを目的としたプロジェクトが行われています。レバノンフルーツファームは、この事業を南アフリカの一つの成功モデルにすることで、さらに他の地域でもおなじようなプロジェクトを広げていきたいと考えています。

―文責 西川栄郎―

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