女性パワーで伝統を守るかめびしの醤油

1998年10月1週号


 (合資)かめびしは香川県引田町にあって、1753年創業、250年の醤油造り。16代目の岡田國義社長、17代目の田中佳苗さんは、女性でもできるよう作業体系を工夫して、伝統の醤油造りを守っていらっしゃいます。
 17代目は上智大学からアメリカへの交換留学中に家業の大切さを理解され、卒業後3年務めた外務省の外郭団体「国際交流基金」をやめての後継ぎです。

◇ かめびし醤油の原料と製造工程 ◇
国産大豆(無農薬20% 国産80%)は蒸し、国産小麦(ハルユタカ、ダイチノミノリ)は炒る。それをむしろの上でこうじ菌をつけて発酵(むしろ麹)。それを塩水(天日塩+ニガリ)に漬けて熟成、それを圧力で搾り、おり引き、火入れ殺菌、ビンづめ。
 もちろん一切無添加です。遺伝子組み替え、ポストハーベストの心配もありません。

◆三年醸造醤油(かけ醤油、たれ用)
 むしろ麹を塩水のかわりに2年醸造の生汁で仕込んで、満三年間以上かけてじっくり熟成させた、最高にぜいたくな醤油。醤油本来の持つ、旨味のバランスが抜群。
 自然のトロ味と塩辛くないマイルドさが特徴。刺身、冷奴など素材そのもののおいしさをうまく引き出してくれます。蒲焼、つけめんのたれ等にもよい。

※いわゆる「3年もの」といういい方について
醤油は3年ものといういい方がありますが、これは夏から次の夏までの2夏のものを、かぞえ年でいういい方で実際は1年より少し長いだけです。
 かめびしさんのところでは、満三年以上のものです。一般は6~7ヶ月が多い。

◆ニガリ入り濃口醤油(一般煮炊き用)
 むしろ麹を2年間熟成させた、普通の煮炊きに手軽に使える醤油です。かけ醤油にも使えます。

◆ニガリ入り薄口醤油(淡い色に仕上げる時の煮炊き、吸い物、たれ用)
 素材の色をより美しく出すために薄口醤油は欠かせません。もともと京料理は白しょうゆを使っていました。(オルターでは日東醸造の白しょうゆ-原料は小麦)。
 大手メーカーは、濃口しょうゆに塩と水を加え、グルソーなどで味つけしたニセモノ薄口醤油を売っています。こんなものが薄口なら、家で濃口醤油と塩があれば簡単にできるのです。
 かめびしは最初から薄口仕込みをしています。最初から薄い色にするための原料配合で一年6ヶ月間熟成させています。(通常メーカーは3~4ヶ月)。
 薄くてもバランスのよい仕上がり。そのままでもおいしい醤油は、ダシとの相性もよく、塩味を効かせたかけつゆ等にも使えます。

◆減塩醤油(健康を気にする人のかけ醤油用、要冷蔵)
 現在のように精製された塩は高血圧の原因となります。(ミネラルバランスのよい海水塩はその心配はありませんが)
 それでも塩分にこだわる方へ。市販の減塩醤油はとかく甘かったり辛かったりしますが、それは透析膜で塩分をろ過する際、旨味成分まで取り除かれてしまうため。
 かめびし減塩醤油は最初から低塩で仕込み、三年の熟成を経て出来上がります。(一般は一年) だからおいしい醤油として普通感覚で使えます。小さな子供、年寄り、病人のいる家庭におすすめ。

◆だし醤油
 醤油:かめびしの濃口、みりん:三河みりん、かつをエキス、こんぶエキス。(仙味エキス社、酵素分解)そのままでも薄めても使えます。
 醤油を生かした辛口ですので、甘味をお好みの方はみりん、砂糖等を加えて下さい。

◆五年熟成醤油もろみ
 もろみ蔵で五年もの間ゆっくり熟成させたもろみを火入れしただけの、本物の「醤油もろみ」です。なめ味噌の類とは違い、独特の強い香りと風味がありますので、少量ずつお使い下さい。
 マヨネーズやお酢と混ぜたり、味噌漬けの味噌替わり、照り焼きやステーキのたれ等、醤油を使うときとは一味違うコクのあるお料理が楽しめます。

市販醤油の問題点
 醤油の製造方法は、戦後大きく変化しました。伝統からかけ離れたものとなっています。丸大豆で醤油を作ると、発酵時間が長くなるので、脂肪加工大豆を使って短時間に醤油を作る醤油がある。脂肪加工大豆とは、石油系の劇薬であるn-ヘキサンを使って抽出法で油を搾ったあとのものです。
 通常は速醸法で7~10日で発酵させ、グルタミン酸ソーダー(脳障害の心配)や蛋白加水分解物(第3世界の人の頭髪の加水分解物、発ガン性の疑い)、水飴(ポストハーベスト、遺伝子組み替えの問題のあるトウモロコシの加水分解物)、カラメル着色(発がん性の心配)を添加した、いわゆるアミノ酸醤油がこれまで大手メーカーの主流でした。
 こんな醤油はいわば塩水に黒く着色したもので、料理に使っても風味がなく、使用量も多く、かえって割高の醤油です。
 
-文責 西川栄郎-

ページの先頭へ