栽培(有機)から仕上げまで一貫生産、文句なしの静岡茶 吉川農園

2003年2月4週号

 

お茶栽培の条件に大変恵まれて・・・
 奈良よつ葉牛乳を飲む会の推薦で、昨年のオルターでのお茶検討会で吉川農園の「水出し煎茶」を検討したところ、大変おいしいお茶でした。そこで採用を決定し、現地調査も終え、今年の新茶シーズンからの登場の運びとなっておりました。ところが、オルター通信(№758)でご紹介しましたように、静岡園さんが倒産なさったため、急遽前倒しをしての登場です。
 吉川農園の吉川勝典さん、勝敏さんは、無農薬・有機栽培でお茶を栽培し、荒茶工程だけでなく、仕上げ工程も自家工場で製茶なさっています。古くから「駿河の清見の茶」と知られた茶どころの一つ、静岡県清水市の北側の興津川の谷筋の斜面、朝霧が出て、いつも風が谷を吹き抜けるため霜がおりず(霜よけのプロペラは必要なく)、お茶栽培に大変恵まれた条件で、お茶作りをなさっています。当然、おいしさも最高のお茶ができています。吉川農園の畑では、他の地域より収獲時期が遅いのです。そのため、以前は新茶が取れても、他産地の新茶が先に高値で売られた後での安い価格での取引になってしまっているという悩みがあったのです。そんなときに静岡の地元の消費者団体とのお付き合いが始まったのです。これがきっかけで、いくつかの共同購入団体とも付き合いが始まって、吉川農園の安全でおいしいお茶が正当に評価されるようになり、今日のような、栽培技術、加工技術ともに優れた品質のお茶が誕生したのでした。

吉川農園の有機茶
 吉川農園の茶畑は、樹齢50~15年ですが、茶畑としては200年以上前から栽培され続けています。栽培面積は2.5ha。畑には石垣を積んでいますが、今でも石垣作りを続けていらっしゃいます。大変丹精込めて栽培なさっている風景です。畑の土は大変よく肥えています。全く文句なしの茶畑です。

▽ 栽培品種 ヤブキタ、サエミドリなど

▽ 栽培方法 
 《 無農薬 》 2002年の春に、畑の有機JAS認証を取得なさっています。
 剪定を工夫して、病害虫対策をなさっています。
 通常の農家では畑の更新は6~7年ですが、吉川農園では4年に一度、深刈りして更新しています。そのため樹勢もよく、収量も落ちません。二番茶も深めに刈って虫害予防をしています。
 《 肥料 》
 EMぼかし…年2回使用
 魚カス粉末(サバ、イワシ)
 菜種粕…オーストラリア産菜種(有機JAS認証あり)、圧搾法(米沢製油)
 さなぎ(丸干し)、さなぎ粕(荒挽き、圧搾)…国産、中国産、ブラジル産

 昔は茶の根の腐りもあったのですが、有機栽培にしてからは、根がよく張ってきたとのことです。昔は年三回農薬を使っていたこともありましたが、今ではもちろん、殺菌剤、殺虫剤など一切使っていません。茶畑にはミミズ、カマキリもたくさん生息しており、茶畑の色も淡い緑で、他の茶畑の色が亜硝酸態窒素を含んで濃い緑になっているのとは対照的です。

製造工程
荒茶製造工程 2002年春に工場の有機JAS認証が取れています。

 ①茶(生葉)……収穫した茶葉は萎凋(しおれ)させないよう冷風で鮮度を保つ。
 ②蒸し工程……蒸気で蒸す。
 ③冷却機………蒸した葉の水分をとばしながら冷まします。
 ④粗揉機………茶葉を強い力で揉みながら乾かします。
 ⑤揉捻機………茶葉に力を加えて、水分の均一を計りながら揉みます。
 ⑥中揉機………茶葉を揉みながら乾燥。
 ⑦精揉機………茶葉に熱と力を加え、形を整えながら乾燥。
 ⑧乾燥機………十分に乾燥。
 ⑨荒茶合組機…できた荒茶を均一に混ぜる。

仕上茶製造工程 近々、有機JAS認証取得予定。

 ①総合仕上機…大小様々な荒茶をふるいにかけ、形を揃える。
 ②色彩選別機…木茎などを取り除く。
 ③仕上茶乾燥機(火入機)
     …さらによく乾燥させる。香りや味を引き出す。
 ④袋詰め………家族の手詰めで作業を行っています。

玄米茶の玄米
 生産者  宮城県 黒沢重雄(有機JAS認証農家)

・・・・・・煎茶の入れ方・・・・・・・・・・・・・・・
・ 10gで3回、15gで4~5回、お茶を出すことができます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

工場風景
一般のお茶にはこんなにも農薬が使用されています(例)
防除時期       
  対象病害虫/使用薬剤名

一番茶萌芽前(3月中旬~下旬)  
  カンザワハダニ/カーラフロアブル
  もち病/コサイトボルドー  
一番茶摘採後(5月中旬~下旬)  
  カンザワハダニ/マイトコーネフロアブル
  チャノキイロアザミウマ(スリップス)/カスケード乳剤   
  チャノミドリヒメヨコバイ(ウンカ)/ダニコール1000フロアブル
  チャハマキ・チャノコカクモンハマキ/コテツフロアブル
二番茶萌芽期~1葉開葉期
  炭そ病・もち病/バイレトン水和剤25
  チャノキイロアザミウマ(スリップス)/ガンバ水和剤
  チャノミドリヒメヨコバイ(ウンカ)/ガンバ水和剤
  チャノナガサビダニ/ガンバ水和剤
二番茶摘採後(6月下旬~7月上旬)
  チャハマキ/ダーズバン乳剤40
  チャノコカクモンハマキ/オルトラン水和剤・カスミンボルドー

三番茶萌芽期(7月上旬~中旬)
  炭そ病・新梢枯死症/フロンサイドSC
  チャノキイロアザミウマ(スリップス)/アドマイヤー水和剤
  チャノミドリヒメヨコバイ(ウンカ)/アドマイヤー水和剤
三番茶開葉期(7月下旬~8月上旬)
  炭そ病・褐色円星病/インダーフロアブル
  チャノキイロアザミウマ(スリップス)/オルトラン水和剤
  チャノミドリヒメヨコバイ(ウンカ)/オルトラン水和剤
  チャハマキ・チャノコカクモンハマキ/テルスター水和剤
8月中旬      
  チャノキイロアザミウマ(スリップス)/マッチ乳剤
  ヨモギエダシャク(シャクトリ)/トップジンM水和剤
  チャハマキ・チャノコカクモンハマキ/トップジンM水和剤 
  チャノホソガ(サンカクハマキ)/トップジンM水和剤
秋芽開葉期(8月下旬~9月上旬) 
  炭そ病・もち病/コサイドボルドー
  チャノキイロアザミウマ(スリップス)/カスケード乳剤                     チャノミドリヒメヨコバイ(ウンカ)/フロンサイドSC
  チャハマキ・チャノコカクモンハマキ/フロンサイドSC
秋整枝後(10月中旬)      
  カンザワハダニ/エンセダン乳剤
  チャハマキ・チャノコカクモンハマキ/コサイドボルドー
  チャノキイロアザミウマ(スリップス)/コサイドボルドー

その他病害虫
防除時期       
  対象病害虫/使用薬剤名
2月下旬      
  赤焼病/コサイドボルドー
一・二番茶萌芽期    
  ウスミドリカスミカメ(ウスミドリメクラガメ)/DDVP乳剤75またはガンバ水和剤
一番茶摘採後    
  チャノナガサビダニ(サビダニ)/オマイト乳剤
7月中旬~10月下旬  
  チャノホコリダニ/コテツフロアブル
・3回発生地区  
 5月中下旬  
 7月中~下旬
 9月中下旬
  クワシロカイガラムシ/アプロードフロアブルまたはスプラサイド乳剤
・2回発生地区
 6月上中旬
 8月中下旬
  クワシロカイガラムシ/アプロードフロアブルまたはスプラサイド乳剤

(文責:西川栄郎)

ページの先頭へ