納豆ひとすじ七十年のこだわり 小杉食品 金沢農業(5)

2003年6月2週号

 

小杉食品の井村さんの有機大豆納豆
 小杉食品は中堅の納豆メーカーで、2000年に完成した新工場は有機JAS認定で、HACCP並の行き届いた衛生管理の工場です。この最新鋭の工場施設に似合わず、小杉悟3代目社長は、おいしい納豆作りにこだわり、実にきめ細やかな努力をしています。納豆にしておいしい大豆がなかなか見つからず、味のよい大豆を求めていたときに、農林金融公庫の資料に金沢農業の井村辰二郎さんの有機大豆が紹介されたのを見て、飛び込みで井村さんを訪ねたのが、井村さんの有機大豆を使うことになったきっかけでした。
 アメリカから輸入の有機大豆は、一応、納豆用でしたがおいしくありませんでした。アメリカ大豆は、一般的に搾油用の品種のため、納豆には向きません。中国産大豆はアメリカ産よりはましでしたが、満足いく味ではありませんでした。国産で有機の井村さんの大豆は、テストを重ねた結果合格し、今年5月の連休明けから新製品として出荷できる段取りとなりました。
 70余年前の昭和8年に、三重県桑名市で納豆業を始めた祖父の初代、小杉金吾さんは、新潟から集団就職で出てこられました。故郷の納豆の味が忘れられず、結婚後、うろ覚えの製法で納豆作りをこの地で始めたのでした。しかし、当時の三重県では、自転車で行商に行っても「こんな腐ったものを売りにきて」と怒られるほど、納豆にはなじみがなかったのです。
 この地に納豆ファンが増えていったのは、初代の地道な努力といっても過言ではありません。納豆作りに生涯を捧げた初代の心意気は3代目も受継ぎ、よりよい納豆作りに今もチャレンジし続けておられるのです。

原料
大豆…井村辰二郎さんの有機大豆、地塚大豆(品種名:納豆小粒)
カタログ2003年5月第3週、6月第1週参照
 納豆にする大豆は着色粒を除くため、井村さんの倉庫での選別後、有機JAS認定のある名古屋の森吉倉庫で、色彩選別機で再選別を行っています。工場では大豆の保管に電子チャージをして、大豆を静電場処理し、大豆本来の風味を甦らせ、品質の向上を図っています。

納豆菌…宮城野納豆研究所の種菌使用。
納豆菌の培地などの情報が開示されていません。
安全で、よりおいしい納豆菌開発のため、自 社工場での納豆菌の培養にも取組んでおられます。オルターとしてもアドバイスをさせていただき、いい菌が見つかるのが楽しみです。

水…井戸水を電子水にして使用しています。
 電子水は納豆菌の生育にいい効果をもたらします。また、消化吸収をよくする働きや、日 持ちさせる効果があるということです。電子水より良いと思われる、オルターの活性水も検討していただけることになっています。

製造工程:
①大豆の洗浄
 ジェット高圧水により研磨、洗浄します。その後、遠心分離で異物を除去し、再び電子水ですすぎます。

②浸漬
 電子水で浸漬します。水温、時間はコンピューターでシステム管理しています。

③蒸煮
 電子水の蒸気で蒸し上げます。大手メーカーでは、2階に蒸し機があり、自然落下で1階の工程に送るので、豆がつぶれないよう堅めに蒸しています。そのため、出来上がった納豆はおいしくなりません。小杉食品では、納豆のおいしさを大切にするために、蒸煮工程も1階に置き、蒸し上がった豆が潰れにくいように工程を工夫して丁寧に扱っています。

④納豆菌接種
 蒸し上がって、まだ湯気の上がっている大豆に、液体の納豆種菌を噴霧して、接種します。納豆菌の品種、量、接種のタイミングにおいしさの秘密があります。


⑤充填
 山形県産の赤松の経木へ、納豆菌を接種された大豆を充填機を使って手作業に近い形で盛り込みます。赤松の経木は抗菌性や水分調整に優れています。市販出しの他のラインは、機械で大量に充填しているのですが、井村さんの委託加工品は、ここは手間のかかる手詰めです。手で盛る方が、ぺたっとせず、よりうまく発酵します。

⑥発酵
 コンピューターで制御した発酵室で、18~20時間じっくりと発酵させます。
大量生産のために、発酵時間を短縮するようなことはしていません。納豆作りには、この温度管理をしっかりしないといけないのです。
 発酵室の壁には、炭が貼りめぐらされていて、遠赤外線の働きで炭火納豆のような風味が得られています。また不快な臭いも発生していません。なお、工場敷地全体の地下にも炭を埋設してあり、快適な工場空間ともなっています。

⑦熟成
 発酵が終わった納豆は、冷蔵庫(0~1℃)に移動し、熟成します。冷蔵庫には空気清浄機によってマイナスイオンを供給し、より良質な熟成をするよう工夫されています。

⑧包装
 金沢大地のパッケージに包装され、出荷されます。
 工場や機械の洗浄は合成洗剤を使わず、お湯や次亜塩素酸ソーダが使われています。オルター紹介のホタテ貝殻焼成カルシウムも検討していただくことになっています。
 大手メーカーの納豆が、堅い豆、あっさりとした味になり、タレの味で食べさせている現在、手作りの豆の風味、香り、コク、深みのある昔懐かしい納豆の味を追求しておられます。

△▼△ 納豆の食べ方 ▼△▼△▼

 納豆は、大豆が大粒の方が豆の味が良く出ておいしいものです。一方、小粒は糸の味、粘りの味が出やすく、食べやすいのです。よく練って食べるとおいしくなります。


一般市販納豆の問題点
 大豆が輸入大豆で、ポストハーベスト農薬の問題がある。輸入大豆は品種が油を多く含む油種系で、納豆にした場合、国産の蛋白質を多く含む大豆より、味や風味が劣る。
 大量生産される納豆は、柔らかくおいしく煮た場合、自重や落下衝撃に潰れてしまうので、それを避けるため堅めに煮ており、おいしい納豆になりません。
 ポリスチレン系のプラスチック容器入りの納豆は、容器の環境ホルモン溶出の恐れの他、アンモニア臭が発生しやすい。発酵時間が8~12時間と短くなった場合のも死菌が発生しやすく、アンモニア臭が発生し、舌にピリッときたり、異臭がするものになる。
 最近では使用はなくなっているはずですが、以前は味付けにグルタミン酸ソーダの添加、アンモニア臭を防ぎ、劣化しにくいようショ糖を発酵助剤として補っていました。問題のある昆布エキス(キャリーオーバーがある)を添加しているメーカーが今でもあります。

(文責:西川栄郎)

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