丸京寒天 無漂白細寒天

2003年9月3週号

 

寒天は、じつは日本人の大発明なのです
 寒天の製造法の発明は、江戸時代、京都伏見の旅籠の主人であった美濃屋太郎左衛門が真冬に作って残った「ところてん」を屋外に置いていたところ、数日後に乾物になったことだといわれています。

寒天は食用はもとより、微生物の培地や様々な医学検査用に使われ、日本人の大発明の一つです。輸出産業として栄えた歴史があります。ところが、使いやすさからか、有害なゼラチンやカラギーナンなどが寒天に代わってお菓子などに使用されるようになり、年々その生産者は減少しています。

 海藻に含まれるアガロース、すなわち植物繊維の一種を主成分とする寒天は、腸の中で老廃物を吸着し、腸をきれいにして便秘を解消してくれます。大腸がんの予防、血糖値上昇の抑制、糖尿病の予防など、日本人にとって食生活の洋風化に伴う、食物繊維不足を補ってくれます。低カロリーですので、たくさん食べても太る心配がなく、爽やかな満腹感を得ることのできる寒天は、ダイエットにも使えます。
またカルシウムや鉄分も多く含んでいるので、髪の毛をつややかに、肌をいきいきとさせ、美容にも役立ちます。

 岐阜地方名産の細寒天は、水に戻すだけで、そのままの形で簡単にヌードルやスパゲッティーの代用として使えますので、新しい感覚の食材として注目してみたいと思います。細寒天は長野県の棒寒天より歴史が古く、元々コシが強いため、京菓子などの業務用が主な用途で、一般家庭用としてはなじみが薄いものでした。細寒天はもちろん、お湯に溶かしてゼリーなどに使うことができます。

 岐阜細寒天の本場、山岡町では、元々農家の副業としての寒天作りの歴史があり、丸京寒天製造所は地域振興を目指して、昭和11年に創業されました。

オルターとの出会いは、3代目三浦一成さんが愛農会の会員で、愛農会の会報で私の紹介記事を見て提携を申し出ていただいたものです。

三浦一成さん(中央)とご両親

無漂白糸寒天
丸京寒天製造所の無漂白細寒天(糸寒天)
原料

天草(テングサ): 
産地:伊豆、知多、大分、アドレス諸島(ポルトガル領)、韓国、北朝鮮、モロッコ。
国産の天草が高騰しています。
品質と価格の安定のため、複数の産地の天草を使っています。

製造方法:

①洗浄
 ドラム型の洗浄機に天草を入れ、塩分、貝殻、土などを洗います。

②水浸
 冬は2日、夏は1日。
 使用する水は、自噴している井戸水です。

③煮熱
 沸騰させた2.5tのお湯に硫酸200ccを入れて酸性にしたところへ天草を入れて、約1時間煮熱します。
 オルターでは安全性を考えて、硫酸より酢酸を使うべきだと考えていますが、丸京寒天製造所では、以前から硫酸を使って慣れていることと、酢酸は
作業中に臭気がきついという理由ですぐに切り替える予定はありません。

④濾過
 抽出した液を濾過します。一般品ではこの工程で次亜塩素酸ナトリウムを使って漂白していますが、無漂白のものは使っていません。

洗浄、煮熱、濾過

⑤凝固
 凝固舟(型)に入れて冷却します。

⑥切断
 凝固したものを羊かん状に切ります。

⑦突出
 乾燥用のよしずの上に、ところてんを天筒で突き出し、手で広げます。

⑧凍てとり
 外気温が氷点下になったとき、中から凍るとボソボソになってしまうことがあるので、「凍てとり」といって、砕いた氷をふりかけて表面から凍り始めるようにします。この工程は太い棒寒天では、表面から凍るため不要で、細寒天独特の工程です。たいていは真冬の夕方から夜にかけての仕事で、一番きつい労働の工程になります。夏場の製造は冷凍庫を使いますので、この工程は必要ありません。

⑨天日干し
 冬場、凍結乾燥を屋外で2週間ほど繰り返すことによって水分が蒸発し、乾燥した寒天になります。夏場は解凍時に水分が滴下し、2日目から乾きますので、3日で出来上がります。

細寒天の使い方
▽▽▽ ヌードルダイエット ▽▽▽
  (ただし1日1食以上はしないようにして下さい)

 ①細寒天を6~7cmの長さに切る。
 ②一昼夜水に浸けて戻し、ザルに上げる。漂白した寒天は1~2時間でもどりま すが、無漂白のものは成分が漂白の薬品で切られていないので、もどしにくいのです。
 ③適宜スープやつゆで味をつけて食べる。
 醤油味のつゆがオススメ。ミートソースをかけて、スパゲッティーのようにも食べられます。

▽▽▽ ご飯のツヤ出し ▽▽▽
 ご飯を炊くとき、お水1カップに対し細寒天1~2本入れると、ご飯のツヤが出て口当たりがよく、日持ちもよくなります。

▽▽▽ 煮魚に ▽▽▽
 煮魚に糸寒天を入れると、美しい煮こごりができます。日持ちもよくなります。

▽▽▽ ゼリー ▽▽▽
 ①水に一昼夜浸けて戻します。急ぐときはぬるま湯で。
 ②糸寒天25本に対して、水600ccをめどに、水を沸騰させてもどした寒天を入れます。
 ③フタをしないで約20分煮ます。寒天が溶けるまで何も入れません。入れると寒天が溶けなくなります。
 ④溶けてから、蜂蜜など甘みを混ぜて冷やします。溶かした寒天が熱いうちは、レモンなど酸っぱいものは入れないで、粗熱を取ってからにします。フルーツを入れるのもおいしい。

▽▽▽ その他 ▽▽▽

 水にもどしたものを味噌汁、寒天ラーメン、冷麺、サラダなどに使えます。

◇◇◇  保存性:1年くらい変化はありません。  ◇◇◇

凝固、天日乾燥

一般市販品の問題点
     寒天 カラギーナン ゼラチンの問題点

▼▼粉寒天

使いやすく便利なので、オルターの会員からも粉寒天の取り扱いをしてほしいという希望があります。しかし、これは工業寒天と呼ばれるもので、価格は寒天の半分くらいです。原料は「天草」ではなく、「オゴ」と呼ばれる安い輸入の紅藻類です。煮て、アルカリ処理をして、ゼリー状にしたものを加圧して水分を抜き、粉末状にしたものです。料理に使いやすく、強度もあるのですが、固いだけでおいしくありません。粉末にしたものがチリから輸入されています。

▼▼「カラギーナン」

 寒天の代わりに水菓子など多用されているものに「カラギーナン」があります。アルカリ処理し、乾燥した粗製品にマウスの動物実験で発ガン性が確認され、問題となりました。今のものは、抽出濾過をしてアルカリ性がないから、アメリカでは問題なしとされています。しかし、塩化ナトリウムなどを使って加水分解する製造工程自体に有害な成分が生成する恐れがあり、要注意であることは変わりありません。

▼▼ゼラチン

 一方、ゼラチンは主として豚、牛、鶏などのニカワ質を利用するものですが、狂牛病などの発生の問題となったレンダリングプラントからでてくる、限りなく粗悪な原料で、動物医薬品、飼料添加物、ポストハーベスト農薬汚染、遺伝子組換え、処理工程の薬品など何でもありの世界のもので、今のところ安全なゼラチンの開発はかなり困難だと考えています。

(文責:西川栄郎)

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