原料こだわり版八丁味噌できました

2009年10月2週号

 

高品質の豆味噌。合わせ味噌で料理の味が引き立ちます。

●こだわり原料
 愛知県岡崎市で今なお八丁味噌の伝統を守る二軒の蔵のひとつ(株)まるや八丁味噌が、年間一桶限定の特別仕様で三河産大豆と神水仕込みの八丁味噌を仕込み、今年10月その初出荷を迎えます。
 (株)まるや八丁味噌の浅井信太郎社長とは、大阪市内で開催された自然食フェアーで何回かご一緒し、八丁味噌のよさをお聞きしておりましたが、原料に中国産の有機大豆を使用されているのに対し、国産大豆に切り替えるべきだと私からは進言していました。これを受けられ浅井社長は、小中学校の同級生・杉浦実氏(マルミファーム代表)が育てた三河産大豆を使い、岡崎市の山間部・保久町神水にある柴田酒造場から天然の井戸水を輸送して、八丁味噌を仕込みました。
 浅井社長はこの試みを2006年から構想し、2007年に仕込みを行い、今年2009年出荷となります。私の進言から5年以上経っていますが、その間真摯にほんもの作りを追求され続けた姿は感動的です。

●八丁味噌は豆味噌
 味噌には、大豆と米麹を使う「米麹味噌」、大豆麹だけで造る「豆味噌(赤味噌)」、また大麦や裸麦を使う「麦味噌」など主に3種類あります。中でも惜しまず手技と手間をかけたほんものの八丁味噌は、たいへん高級でパワフルな豆味噌です。
 水分を控えて仕込み、丸い川石をひとつひとつ積み上げた石積みの重石、二夏二冬じっくりと人の手を介さず桶も動かさず土間の上に寝かせた独特の天然醸造が、大豆の旨味と豊富なアミノ酸を含む栄養を凝縮させ、独特の風味、香り、艶を与えています。この水分含量が低く堅い味噌にプライドをもっています。

●創業600年以上の老舗
 八丁味噌の名の由来は、徳川家康公誕生の岡崎城から東海道を西へ八丁の地、八帖町(旧八丁村)で造られる味噌ということです。徳川軍が強かったのは八丁味噌を使った「戦陣にぎり」のおかげというエピソードも伝わっています。創業当時から現在までこの伝統製法を守る蔵は「(株)まるや八丁味噌」とお隣の「カクキュー」の二軒だけです。この二軒を撮影現場としたNHK朝の連続テレビ小説「純情きらり」で八丁味噌を知った方も多いはずです。
 この土地に豆味噌作りが興ったのは、米麹味噌造りには適さない高温多湿の気候、幼年の豊臣秀吉(日吉丸)と蜂須賀小六が出会ったことで有名な矢作川の水運の要路と東海道が交わる交通の要所、下流には塩の産地・吉良町もあったことなどです。
 (株)まるや八丁味噌の創業は1337年、初代大田弥治右衛門によると口伝で伝えられています。以来600年以上、基本的な製法は現在まで脈々と伝えられています。建物は木、瓦、粗壁でできており、木桶は一番新しいものでも昭和初期のものです。これら蔵つきの微生物が伝統の味を支えています。戦時中、軍部から贅沢品とみなされて、短期間に大量生産のできる豆味噌を造るよう国から圧力をかけられたとき、生産活動を中断されたほど気骨のある蔵です。
 浅井社長は33才の時、いとこがオーナーで当時は時代の流れの中で経営の岐路にあった(株)まるや八丁味噌に勤め、ヨーロッパ勤務をして八丁味噌の販路を広げていました。今では年間30トンの輸出をしています。この日本の伝統品が欧風料理によく合い、多くのシェフ達や自然食を愛する人々にも受け入れられてきました。オーナー家の大田家の跡継ぎがいなくなったとき、「八丁味噌の伝統をつぶすわけにはいかない」と、八丁味噌の歴史を世界中に伝える役割を果たすことを決意され、後継ぎとして社長に就任されて現在に至っています。
 多くの消費者が安全な八丁味噌の価値を正しく評価して、やがて生産全量が特別仕様のレベルに変われる時代がくることを願っています。

(株)まるや八丁味噌の「三河産大豆と神水仕込みの八丁味噌」
■原料
大豆 ・・・三河産大豆(フクユタカ)
      マルミファーム代表・杉浦実さん栽培、慣行栽培。
      ※今後栽培方法のレベルアップが課題です。
塩  ・・・オーストラリア天日湖塩
種麹 ・・・樋口松之助商店(大阪)
種麹をまぶすのに使う香煎・・・大麦は滋賀、福井、茨城、富山、石川各県愛知県のメーカーで加工しています。
水  ・・・岡崎市の山間部・保久町神水にある柴田酒造場の井戸水。硬度3の極めて低い軟水。

■製造方法
①原料大豆受け入れ
②選別
③大豆を水に浸漬(水槽はステンレス)
④水を切った大豆を蒸煮(103℃)。
 大豆はこれで赤褐色になり、蒸すことで栄養分を外に逃がしません。
⑤冷却
⑥ミンチにした大豆をこぶし大に握り固め、製玉
⑦麹菌をまぶし、むろで4日間寝かせて豆麹に製麹。
 麹むろの洗浄には薬品を使用せず、水道水だけで洗浄しています。
⑧豆麹に塩と水を加え、木桶に3層に仕込む。原料を入れては足で均一に踏み固めて空気を抜くという地道な作業を行います。一般の味噌より水分を少なく仕込むのが特徴です。
⑨6トンの味噌が入った直径約1.8mの桶の上に麻布を敷いた上から、重石として4トンを超す天然の川石を円錐状に積み上げる(石積)。水分が少ない味噌なので重石が少ないと 乾燥してしまいますが、重石の圧力で桶全体に水分を行き渡らせることができます。この石積ができるまでには7~8年の職人の修行が必要だといいます。
⑩熟成は二夏二冬(約2年以上)、温度調節することなく静置
⑪熟成検査
⑫掘り出し
⑬無殺菌のまま包装

重石に使う丸みを帯びた川石は、桶の上でうまくバランスを保ちます。
木桶は呼吸し、木桶の竹タガは伸縮性に富み、木桶は傷みません。これらが伝統製法を裏付けています。

■賞味期限
 8ヶ月

市販の八丁味噌の問題点
愛知県味噌溜醤油工業協同組合は2008年、愛知県産の豆味噌を「八丁味噌」と名乗ることとしました。八丁味噌の名声を利用しようということですが、伝統製法に拠らず、醸造方法も品質も異なり、含水率も高く(一部のメーカーはいかに水分を増量するかで価格をごまかしています)、アルコール添加や熱殺菌を行うなどの八丁味噌もどきは、もちろん伝統の八丁味噌とは全くの別物です。(株)まるや八丁味噌、カクキューとも当然のことながら味噌組合から脱退されました。
 上記以外の普遍的な問題点として、輸入大豆を原料とした味噌には、原料の大豆にポストハーベスト農薬、遺伝子組み換えなどの問題があります。

―文責 西川栄郎(オルター代表)―

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