シンプルだから安全でおいしい豆腐

2007年9月1週号

国産無農薬大豆など、とことん原料にこだわり、手わざを惜しまず作るおいしい豆腐です。

●究極の豆腐作り
 京都府長岡京市の「あらいぶきっちん」では、国産無農薬大豆、海水にがり、国産菜種圧搾一番搾りの油など原料の安全性にとことんこだわり、手わざを惜しまず無添加で、安全でおいしい豆腐・あげ類を製造しています。
 代表の矢沢裕士さんは「豆腐作りはシンプルで、ごまかしがきかない。マニュアル通りいかず、毎日毎日新鮮で飽きることがない。苦労と楽しみは裏返し」と語っておられます。豆腐作りの基本を忘れず、薬品に頼らず伝統をシンプルに守り通しているからこそ、安全やおいしさが製品に凝縮しています。
 少しでも良い原料で、というオルターからの提案に常に快く率先して取り組んでいただき、大豆生産者の金沢大地の井村辰二郎さんの畑までも出向かれるという熱心さです。

●安全な食への想いで繋がった縁
 かつて矢沢さんは、日本の有機農業の草分け的団体である京都「使い捨て時代を考える会」の安全農産供給センターでスタッフをなさっていました。学生時代、同会に出会い、何か食べもの作りに取組みたいと思っていたところ、代表の槌田劭先生に「まずスタッフになって道を探せ」といわれたそうです。やがて同会の後押しと、影山治雄さんの指導を受けて、1986年に豆腐屋を始められました。
 影山治雄さんは、オルターの菜種油の生産者・影山製油所の次男です。現在は神奈川県の豆腐屋「おかべや(小田急百貨店の千円豆腐で有名)」です。影山製油所はかつて表作の大豆、裏作の菜種を加工して豆腐も作っていました。その指導を受けたので、矢沢さんは最初からあげ作りに影山さんの菜種油を使用しています。
 あらいぶきっちんのオルターへのご紹介は、干川了さんからです。干川さんはオルターのパンの生産者(カタログ2000年6月1週号参照)であり、矢沢さんとはかつて安全農産供給センターの同僚でした。

●後継者も育っています
 店名の「Alive Kitchen」(生き生きと活気のある台所)の由来は、若い頃ご夫婦でニューヨークを旅行中に、たまたま入った菜食のレストランの明るい雰囲気とメニューに魅せられ、日本に帰ってやりたかった店の屋号にと決めていたということです。2005年11月には、20周年を機に店舗と工場も新築され、アイテムもいっそう充実してきました。
 現在では、娘さんのゆいさんと娘婿の福田洋平さんも家業を継いでいます。ゆいさんは子どもの頃、お父さんが働く姿をみて、朝早くて大変重労働な豆腐屋という仕事は絶対いやだ、と思っておられたそうですが、今ではとても大切でやりがいのある仕事だと思っておられます。

あらいぶきっちんの国産無農薬大豆豆腐・あげ
●原料
 無農薬大豆…滋賀県・農工舎(中川さん)のオオツル、北海道・緑萌(滝本さん)のトヨムスメ、石川県・金沢大地(井村辰二郎さん・カタログ1999年10月2週参照))のアヤコガネ。
 にがり…伊豆大島海精にがり。海水から塩を採取したあとの残母液で、本来のにがりです。うまみのある豆腐ができますが、凝固させるには高度の技術が必要。
 菜種油…影山製油所、国産菜種圧搾一番搾り菜種油(カタログ1999年10月1週参照)。
 水…おいしい乙訓の水を、さらにオルター取扱いの活水器ハイパークラスター(カタログ2000年4月3週参照)で活性水にして使用。

 化学にがり、消泡剤、ふくらし粉、酸化防止剤、栄養強化剤、キャリーオーバーの添加物など一切の化学薬品を使っておりません。

●豆腐の作り方
 ①大豆を活性水に一晩浸漬。②グラインダーで大豆をすりつぶして呉にする。③圧力釜で煮る。このとき消泡剤を使いません。目の細かい網で泡をすくいとります。その分豆乳量が減ってしまい、歩溜りは悪くなっています。④豆乳とおからをスクリュープレスで分離します。スクリュープレスは最新の密封型の脱水機で、空気に触れずに分離するので、上等の豆乳がとれ、衛生面でも優れています。従来の循環タイプの機械だと空気に触れるので、酸化しますし衛生面でも劣ります。⑤桶に受けた豆乳に櫂(かい)を使ってにがりを合わせて、豆腐を作ります。このとき使うふきんは、蛍光増白剤の汚染の心配のない未晒しです。洗濯もカセイソーダーで洗浄して、合成洗剤などは使いません。

●あげの作り方
 あげ生地の作り方は豆腐の①~⑤と同様ですが、低めの濃度で作った薄い豆乳を使い、固まらないよう自然にじわっと固めます。⑥あげ生地を型箱に入れ、徐々に重石をおいて油圧プレスで水切りし、約1cm厚さに作ります。それを冷蔵庫にストックして使っていきます。⑦二層式のフライヤーを使って二度揚げを行います。最初は120度で15分間揚げて生地を展ばします。次に180度で15分間揚げて完成です。あげは1時間に100枚程度の手揚げです。その日の生地の出来を確かめながら、1枚1枚丁寧に揚げていきます。だから理想的な、おいしいあげができるのです。市販のように薬品で膨らませて皮しかなく、すかすかでまずくて油で胸やけするようなあげではないのです。⑧使い終わった油は、その都度炭と紙を使って劣化や水分を防いで保管しています。

市販の豆腐の問題点
 一般に大豆がポストハーベスト農薬や遺伝子組換えのある輸入大豆であるという点です。国産大豆使用と謳っているものでも、国産50%程度でしかないものがあり、注意が必要です。「食品と暮らしの安全」の調査で、国産大豆使用という表示のある豆腐12社中の7社から遺伝子組換え大豆、すなわち輸入大豆が検出されています。
 日本の製塩法は、昔の塩田法や流下式などから、イオン交換法に変わってしまいました。その為に、豆腐を作るにがりが手に入らなくなっています。そこで、にがりのかわりにGDL(グルコノデルタラクトン)や硫酸カルシウム(石膏)のような凝固剤が使われています。GDLには催奇形性が確認されており、石膏はギブスや彫刻の材料であって食品ではありません。
 こういう凝固剤を使う事によって、私達の豆腐なら1丁分の大豆から、何と17~30丁もの豆腐を作る事も可能で、安売り用の豆腐はその様にして作られているのです。薄い豆乳で作っている充てん豆腐にはこの様な凝固剤が不可欠です。現在ではちゃんとしたにがりを使って絹ごし豆腐を作れる職人は殆どいなくなっています。絹ごし風の豆腐も、こういう凝固剤の世話になっています。「天然にがり」や「本にがり」と称して高値で市販されているにがり豆腐も、昔からのにがりを使っているのではなく、にがりの主成分である塩化マグネシウムという薬品を使っています。この塩化マグネシウムは、にがり同様、大豆タンパク質を固める事ができますが、にがりの様にはおいしい豆腐になりませんし、偽物にがりでは現代人のミネラル不足は解消されません。
 おからと豆乳とを分離する時に泡が立って、作業の邪魔になります。そこで市販品では、合成界面活性剤やシリコン化合物など8種類の化学薬品を含む「消泡剤」を使っています。昔、家で手作りする時には米糠を使っていました。米糠からにじみ出る米糠油が消泡剤の役割をするからです。この理屈を利用して、尾崎食品さんでは、影山さんの国産菜種油(圧搾搾り)を使っています。あらいぶきっちんさんや太子屋さんでは消泡剤を使わなくなっています。使わなくてもいける技術をお持ちだからです。
 市販のもめん豆腐では、こし布の洗浄に使った合成洗剤由来の蛍光増白剤がついている事があります。これは紫外線ランプを当てると蛍光を発しますので、簡単に検知する事ができます。蛍光増白剤は発ガン性が確かめられている為に、食品衛生法では布巾や紙皿の様な食器に使用が禁止されています。日本薬局方ではガーゼや脱脂綿に、通産省通達ではベビー用品に使用する事が禁止されています。人が食べたり、傷口にふれたり、なめたりしてはいけないからです。市販の豆腐の殆どが食品衛生法違反の状態と言えるのです。
 一般のあげに使う油は、材料が輸入大豆の白絞油(ポストハーベスト農薬・遺伝子組み換え)で、石油系の劇薬n-ヘキサンで抽出したトランス脂肪酸であり、精神病やがん、心臓病などになる心配のあるものです。この油を、薬品を入れて何回も再生しながら使っている為にすっかり酸化してしまっており、あげは使う前にお湯で油抜きをしないと胸やけがして、とても食べられない様なものになっています。また、市販のあげが皮だけ堅くてパリパリなのは、ふくらし粉を使って少しの原料で利益率の高い製品に仕上げているからです。

―文責 西川栄郎(オルター代表)―

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