自給的・少量多品目栽培のおすそ分け野菜

2007年11月5週号

 

農家の野菜の自給の延長で食べるのが、一番安心安全、良質な野菜の食べ方です。
オルターの野菜セットにチャレンジしませんか。


●無農薬野菜を求める運動から生まれた「複合自給野菜」

 昔、農民は農作物を換金作物としてではなく、自らの生命を育む食べものとして栽培していました。自給することが当然のこととして、「百」すなわちたくさんの種類を育てるものとして「百姓」と呼ばれていました。
 しかし戦後、換金作物として、単作、大量生産、機械化、主産地形成が進められ、病虫害を恐れるために農薬を使用し、量産のために化学肥料に頼る現代の農業風景となってしまいました。
 私が安全な食べもの、無農薬の野菜を求める運動を始めてすぐに、安全な野菜を手に入れるためには自給的な農家のおすそ分け以外にはないということに気が付きました。すでに換金作物を栽培している農家に農薬を使わないことを求めるのは、たいへん困難なことだったのです。反面、自給を前提に少量多品目の野菜を畝(うね)ごとに栽培している農家にとっては、それぞれの作物に農薬を撒くことの方がむしろ難しく、すぐにも無農薬栽培に戻ることができたのです。多品目栽培では多少の失敗は経営全体にダメージを与える心配はしなくてもよく、病虫害に対する対応力も大きいのでした。
 そして、その自給の延長線上に毎週多品目の野菜を届けていただくことで、消費者もまた自給的な野菜の食べ方ができたのです。多種類の野菜が手に入り、知らない野菜も届けられるので料理のレパートリーが広がり、農業の現状や伝統への理解も深まったのです。
 私はこの農家の栽培、消費者の食べ方を徳島時代に「複合自給野菜」と名付けました。この方式は関西、関東の消費者団体や流通団体に影響を与えました。しかしその後、それらの団体のセット野菜は自給の質から離れ、各地の野菜を便宜的にセットするという方向へ向かっていきました。

●作る人、食べる人、両方にメリットがある
今では全国各地に有機農業を実践する農家が増え、必ずしも自給的栽培にこだわらなくても、安全な野菜は手に入るようになってきました。オルターでも単品で野菜は自由に購入できるようになっています。しかし、今でも、最も良質で安全な野菜を食べる方法はこの複合自給野菜、オルターのセット野菜を食べることだと思います。
 ひと畝ごとに多種多様な野菜を栽培することで病虫害に対する抵抗力が大きい畑は、無農薬野菜の栽培に適しています。農家にとっても、大きい畑で単一の作物をつくる、いわば「満員電車の中でインフルエンザの感染を恐れる」ようなリスキーな栽培でなく、少々失敗があっても農家経営には大きなリスクとはならない栽培方法といえるのです。セット野菜を支える消費者は、供給側の安定生産も保障します。
 消費者側にとっては、安全な野菜を安定的に手に入れる方法で、旬ごとの多様な野菜を楽しめます。畑で予定していた何かのアイテムが不作でも別の何かが入り、またおまけサービスをしていただくこともあります。
 料理の腕に自信のない人、工夫が苦手な人には、知らない野菜が届いたときにはストレスになることもあるでしょう。でも、そこで発想を転換し、知らない野菜がきても楽しくチャレンジしてみれば、レパートリーが拡がり、好き嫌いなくバランスのよい食生活を営むことができます。自分で畑を耕し自給しようと思えば、これが本来の食べ方になるはずです。

●野菜セットを軸に、単品で補う野菜生活を

 私のおすすめする野菜の注文の仕方は、家庭の必要量に対して負担感のない少なめの野菜セットを注文し、軸となる安定的な野菜の購入をするとともに、それで足りない分を単品野菜で補い、楽しみながらいろんな料理にチャレンジするという方法です。
 CC'Cookingで料理の腕を磨いて、いのちと自然にやさしいオルターの複合自給野菜セットに取り組んでみませんか。

生産者紹介 その1
●白鷹農産加工研究会(山形県西置賜郡白鷹町)
山形県南西部の白鷹町で26年間、自ら栽培した野菜を加工販売しているグループ。冬、雪は大地の布団となり、春の雪解け水は田畑を潤し、害虫の発生を抑制し、畑を浄化しながら微生物分解を助けています。そんな大地に根付いた野菜たちは、長年の有機農業の実践の中、雑味のない雪国野菜を育ててくれています。

●くまもと有機の会(熊本県上益城郡御船町)
30年以上前から一貫して無農薬・無化学肥料栽培を実践してきたグループ。生産者は熊本県各地におられ、地域ごとに小グループを作って出荷しています。「自分自身、家族、友人知人に食べて欲しいものを作り販売すること」が大きなテーマ。熊本の“有機の基地”をめざして、日々の活動に取り組んでいます。

●キッチンガーデン(熊本県上益城郡山都町)
すぐれた野菜の生育条件が備わった中山間地で、自家採種にこだわった生命力の強い有機野菜づくりに取り組む20名のグループ。すべての畑で有機JAS認定を取得し、20名の連携で年間通して50品目に及ぶ野菜を出荷。しっかり土壌を分析し、科学的データと食味のよさ、両方に裏打ちされた健康野菜をつくっています。

生産者紹介 その2
●西川年武さん(和歌山県橋本市吉原)
無農薬はもちろん、露地野菜に頑固にこだわっている西川年武さん。太陽を直接受けた旬の露地野菜は、栄養価が高く、アクの少ないのが特徴です。近頃は自然農法の梅や果樹栽培にも悪戦苦闘中だそうです。野菜セットは、個人の希望を聞いてセットを組んでくださいます。予算に合わせたセットもでき、長年のファンが多いのです。

*お申し込みは直接西川さん宅へお願いします → 0736-32-0461

●小林忠さん(徳島県徳島市国府町)
自然農法ひとすじに30年の達人。農薬、化学肥料はもちろん有機物堆肥も使わない畑の土はフカフカで、やわらかく甘くみずみずしい野菜が育ちます。小林さんの野菜を食べた病気の人からは、「元気を取り戻した」と感謝の手紙がたくさん届けられています。81才になられた今も、人々の幸福を願って自然農法に打ち込む毎日です。

*ただ今、キャンセル待ち中です

生産者紹介 その3
●亀田有機農法研究会・亀田嘉さん(奈良県五條市霊安寺町)
塾の講師などを経た後、実家の畑を継ぎ、田舎暮らしと有機農業に目覚めた個性派。水菜や天日干しのお米でもおなじみです。「ミネラルのバランスを極めた私の土壌で育った野菜をたっぷり使って、パスタ料理を楽しんで」。そんな思いから今年の夏、なす・トマト・紫とうがらしなどを詰めた「亀田さんの夏野菜セット」を出荷しました。

●谷農園(三重県上野市予野)
谷農園がこだわる露地栽培では、畑だけでなく近くの山や土手などの生態バランスで野菜を育てます。「効率主義からは遠いですが、自然の力で育つ野菜は、野菜そのものの能力・栄養など目に見えない部分で人間にとって効率的だと考えています」と小倉和久さん。農家になりたい若者も育てながら、地域循環型農業を実践中です。

野菜生活を応援します!

野菜セットと単品野菜を組み合わせて作る1週間の健康夕食レシピ集・冬編ができました。CC’Cookingオリジナル。オルター会員の野菜生活を応援します。

―文責 西川栄郎(オルター代表)―

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