まちと村を結ぶ熊野味もうで

2006年4月3週号

熊野の地域おこしのために
素朴な山村の産品を加工しています。
熊野からの味の便りに出会いませんか。

●人と地域と自然の関係を見つめて
 熊野本宮大社と湯峰、川湯、渡瀬という3つの温泉に恵まれた本宮町は、癒しを求めて古くから多くの人々が訪れた熊野詣として知られた町です。最近では世界遺産として登録されたことでも脚光を浴びています。
 昨今、日本の山村は、いかんともしがたい過疎化が進んでいます。本宮町も例外ではなく、過疎化と人口の高齢化が進み、Iターン者なしでは祭りも開けない状態となっています。その本宮町で活動を始めた「(有)熊野鼓動」は、都市から熊野への移住を希望するIターン者、あるいは故郷の熊野へ帰ってくるUターン者のための仕事や住居を提供する拠点作りをめざし、地場産品の加工をしています。
 経営のモットーは、
①地元熊野で栽培、採取された原材料を中心に使った食べものを届ける。農産品は可能な限り農薬や化学肥料を使わずに栽培されたものを使い、加工工程においても食品添加物や化学薬品を極力控える。
②取扱品は熊野の息吹きを伝えるメディアとして位置づけ、原料を作ってくださる生産者、品物をお買い求めいただくお客様との良好かつ継続性のある関係を築く。
③仕事を単に金銭を得る手段、会社をそのための装置として捉えるのでなく、仕事を通じて自己の成長を心がけ、地域にとって必要とされる会社となるよう努力する、です。

●半端ではない田舎で再起を図る
 (有)熊野鼓動の責任者・横瀬恒人さんは以前、市民運動から派生したある宅配団体の「作り手の顔が見える食材を消費者に届ける」という理念に意義を感じて勤めた経験があります。関西地区の責任者にまで抜擢され、充実した日々を送っていましたが、やがてその団体が某食品メーカーに買収されることに。人の善意で続いてきた運動をビジネスの対象とすることに愕然とし、お金のためだけに神経をすり減らしている生活に疑問を感じ始めました。やがてどんなに深酒してもすぐうなされてしまうほどの不眠症になりました。
 そんな生活から思いきりハンドルを逆に切って田舎暮しを求めたとき、熊野で地域おこしをしている知人を思い出し、相談に行ったのがきっかけで、(有)熊野鼓動の前身である団体でアルバイトとして働くことになりました。2002年4月、大都会東京から本宮町へ家族で移住。ところがその直前、この団体の創設者で町議でもある鈴木末広さんが交通事故のため急逝され、結局横瀬さんがその志を引き継ぐこととなられたのです。

●命の営みを大切にしたものづくり
 社名の熊野鼓動は、「熊野古道」と、心臓の動き「鼓動」と音をかけることで、「命の営みを大切にしたものづくり」がこの地に根づいてほしいという思いが込められています。横瀬さんは「まだまだ品質的に完成したとはいえませんが、志をもって頑張っている発展途上のメーカーをぜひ応援してほしい」と語っておられます。
 私からは、熊野での地域おこしの象徴として、地元産の小麦を原料とした土窯パンの里づくりの提案をしています。その第一号窯が地元小学校跡に完成し、近くその窯で焼いたパンもお目見えする予定で、楽しみにしています。

熊野本宮・よもぎ釜餅と古代米釜餅
熊野本宮近郊では、折に触れて、もち米をご飯のように釜で炊いて、そのまますりこ木で搗いて皆に振る舞っていたようです。このお餅によもぎをたっぷり加え、餡をくるんだのが「よもぎ釜餅」。おはぎとも大福とも違う、ふんわりとした独特の食感が特徴です。さわやかなよもぎの香りとつぶ餡のほのかな甘さが絶妙です。
 「古代米釜餅」は、やわらかい食感が特徴の釜餅に古代米特有の粘りが加わりました。ほんのり甘いつぶ餡との相性も抜群です。地元のおばあちゃんたちが心を込めて作った、熊野本宮以外では味わえない、知る人ぞ知る幻のお餅です。

●原料
〔よもぎ釜餅〕
 もち米…生産者は中村全文さん、深瀬泰男さん(本宮町)。除草剤1回、殺菌剤1回
 小豆…北海道産
 塩…中国産天日海水塩
 てんさい糖…北海道産
 きな粉(別添え)…国産大豆
 よもぎ…宮城製粉(株)・宮城県産自生カズザキヨモギ。蔵王山麓や阿武隈川流域で5月~7月に採取、
 草の上部15cmだけを使用して急速冷凍。重曹で煮た後、すぐに洗い流し。
 注:土産物店行きのものには水飴を使っていますが、オルター仕様では使いません。

〔古代米釜餅〕
 もち米、小豆、塩、てんさい糖、きな粉…同上
 古代米…生産者は松本平男さん(本宮町)。オルター基準◇(除草剤1回)

●製造工程
〔よもぎ釜餅〕
 ①もち米を炊く②よもぎを混ぜる③すりこぎで搗く④小豆、てんさい糖、塩で作った餡を包餡

〔古代米釜餅〕
 ①もち米と古代米を炊く②すりこぎで搗く③小豆、てんさい糖、塩で作った餡を包餡

   ー文責 西川栄郎ー

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