シーズンだけのお楽しみ 超貴重な自然栽培きのこ
2006年10月3週号


天然の原木を使い、自然のままに成長した
シーズン限定・秋の味覚をお楽しみ下さい。

●採るきのこから、栽培するきのこへ
 昔、きのこは自然の中で採取したものを食べていました。当然、秋など採れる時期も決まっていました。しかし現在、きのこは栽培する時代です。きのこ生産者は、天然のきのこを探して採っているわけではなく、きのこの菌を原木や菌床に植え付けて、温度や水分を管理してきのこを発生させ、収穫します。店頭に年中色とりどりのきのこが並んでいるのは、このためです。
 きのこの栽培には、広葉樹などの原木(天然の木)に菌を植え込んで栽培する伝統的な「原木栽培」と、オガクズなどを固めたものに植菌する「菌床栽培」があります。原木栽培は、重たい原木を運ぶ重労働が生産者に敬遠され、消費者もその値打ちを理解できない現実の中で滅びかけており、今は菌を植えて3~4ヶ月で採取できる菌床栽培が一般的です。

●原木栽培より貴重な、自然栽培きのこ
 奥高野と呼ばれる奈良県野迫川村できのこ栽培を営む川崎きのこ園の川崎昌助さんは、現在ではたいへん珍しいきのこの自然栽培を行っています。山の中で、原木を使って、しいたけはもとより、ひらたけ、なめこ、ヤマブシタケなどを自然まかせで栽培するのです。
 川崎さんの「自然栽培」は、原木に菌を植えるところまでは普通の原木栽培と同じですが、その後も原木をハウスなどの施設に移して管理することをせず、山の中に置いて全く自然まかせで粗放栽培するもので、原木栽培よりさらに貴重だといえます。獲れ秋から山に雪が降り積もって収穫ができなくなるまでのしばらくの間、この超貴重な秋の味覚を楽しませていただけます。
 川崎さんとの出会いのきっかけは、野迫川村で田舎暮しをしていた知人からの紹介でした。川崎さんから、原木栽培しいたけの井上順一さんを紹介され、さらにその出会いは「国産原木しいたけの会」結成につながりました。
 川崎さんは施設内でのしいたけの原木栽培にも取り組んでいます。

【川崎きのこ園の自然栽培きのこセット】
 なめこ、ひらたけ、ヌメリスギタケ、ヤマブシタケ、クリタケ、しいたけ、干ヒラタケなどのたいへん珍しいきのこ、しかも自然栽培のきのこを2~3種セットしています。朝晩の温度差のある高冷地でできているため、旨味たっぷりの肉厚のきのこです。水も空気もきれいな山の中で、全くの自然まかせで粗放栽培していますので、その週に採れたものが、採れた割合でセットされていることをご理解ください。
 雪が積もって収穫できなくなるまでのしばらくの期間、出荷していただきます。シーズンだけの秋の味覚をお楽しみ下さい。

●栽培方法
◎ひらたけ
市販で「しめじ」と呼んで売っているものです。原木はカエデ、ブナ、ヤナギ、シデなどの柔らかい木を使います。この原木は3年使います。写真のように輪切りにした原木に植菌したものを山の中に置いて、栽培しています。

◎なめこ
原木に落葉広葉樹を使っています。なめこ栽培は、なめこの菌が強いので、特に原木の種類に限定はありません。図のように木を枕にして植菌した原木を置くのですが、このかたまくらにもなめこが増殖してくることがあります。原木は7年間使えます。

◎しいたけ
しいたけは、生しいたけ用のハウス栽培ものと、乾燥しいたけ用の山の中の自然栽培のものとがあります。原木は岩手県産のオオナラ(ミズナラ)やコナラを使っています。ハウスでは2年間、屋外では10年間使っています。農薬や化学肥料(栄養剤など)化学薬品の使用は一切ありません。

◎ヌメリスギタケ
原木はヤナギ類、シデ、ブナなど比較的柔らかい木を使います。山林の中に枕木を置き、なめこと同様の作り方です。なめこより少し気温の高い時期に出ます。原木は植菌後2~5年ほど使います。

◎ヤマブシタケ
痴呆症の予防やガン予防に効果があるといわれる幻のきのこ・ヤマブシタケを、川崎さんたち「野迫川村林業研究会」は、村のコナラの原木を利用して、自然発生に成功しました。原木、植菌、ほだ場、発生まで野迫川村の自然の中で、100%無添加無農薬で栽培したヤマブシタケです。現在は試験的な栽培で生産量はわずかです。
原木はナラ類、クヌギなど。山林内で10~15cmの厚さの原木を2つ重ねて地面に並べます。原木は植菌した年から発茸があり、5年くらい使います。

◎クリタケ
原木はナラ類、クリなど。山林内でなめこと同様の作り方です。原木は2~5年くらい使います。

◎干ひらたけ
気候によって大量にできたとき、ひらたけを干します。

●市販のきのこの問題点
 現在日本国内で栽培されているきのこ類(しいたけを始め、なめこ、しめじ(実際はひらたけ)、えのきなど)は、そのほとんどが問題だらけの菌床栽培です。菌床栽培とは、数種類のオガクズにきのこの栄養となる人工的な栄養剤や化学薬品を混ぜ、ブロック状や味噌玉状に固めた合成培地を、ビニールハウスなどの施設内に置いて3~4ヶ月かけて菌をまわし、その後きのこを発生させる方法です。
 このオガクズが薬品使用のない国産材のオガクズならまだましなのですが、輸入材の場合、エンドリンやディルドリンのような畑ではとっくに使用されなくなったきわめて有害な有機塩素系農薬が使われているものや、かまぼこ板のように木材の芯まで漂白剤を使って白くしているものなども混入してくる心配があります。また建築用木材には防腐剤処理が行われています。ですから、オガクズの出所を確かめる必要があります。
 菌床栽培の合成培地には、オガクズ以外に栄養分としておから、ふすま、コーンスターチなどが使われますが、いずれもポストハーベスト農薬汚染や遺伝子組み換えのある大豆・小麦・トウモロコシ由来の原料が使われている可能性大です。尿素、クエン酸なども化学肥料・栄養剤として使われています。増収をはかる目的でホルモン剤も使われています。トルコデルマという椎茸菌の着床を妨げる青・白カビを殺すのには、ベンレートなどの殺菌剤、農薬も使われています。菌床きのこから猛毒のチアベンタゾール(TBZ)農薬が検出された例もあります(「日本応用きのこ学会議 Vol.7・NO.1)。これらの農薬は合成界面活性剤を含んでいます。他の作物同様、農薬耐性問題でますますその使用量が増えている心配があります。
 スーパーの店頭に並ぶ主流は、安い中国産の生しいたけです。日本の商社が技術を持ち込んで安く作らせたものです。危険な菌床栽培というだけにとどまらず、輸入時には塩素系の保存剤が使われています。
 栽培方法が原木を使ったものであれば問題はまだ少ないのですが、菌床きのこに使われる農薬、化学肥料、ホルモン剤は原木栽培でも使われていますので、原木栽培だからといって安心というわけにはいきません。安全な原木栽培なら、原木を捨てておくとカブトムシが繁殖してくるのですが、市販の原木や菌床は5年間放置されてもカブトムシは現れず、まさに死の世界というしろものです。
 栄養過多で過保護に育ったこのような菌床栽培きのこは、食べるとまずく、有害で、鮮度低下が激しく、しいたけの成分エリタデニン(高血圧に有効な成分)もわずかしかありません。しかし、見た目は原木きのこより形がきれい。合成培地では生えるのが簡単で、原木のように苦労して生えていないため形が整っています。また大きくて比重の重いものが一般的で、しかも安いのです。圃場での水管理でいくらでも大きく重いものが作れます。水を使い過ぎると品質が低下するのですが、消費者はこのような見かけにだまされやすいのです。
 よいきのこを選ぶポイントは、形が不揃いで小ぶりで比重の軽いものです。さしみで食べられる鮮度を長く保ち、料理に使うと実質のある分、じつはお得です。
 オルターで扱うきのこ類は、安全性と風味を重視して選んでいます。生しいたけは井上順一さんの原木栽培(施設内で発生)、干ししいたけは井上さんとやさか共同農場の原木栽培(山中で発生)、ひらたけ、ぶなしめじ、エリンギ、なめこ、えのき茸などは国産材使用の菌床栽培、ホワイトマッシュルームは馬厩肥に鶏フン、石膏を加えて発酵させたコンポストで栽培しています。いずれも農薬・化学肥料・ホルモン剤とも一切不使用です。

ー文責 西川栄郎(オルター代表)ー

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