滋味あふれる旨さ、鳴門の手掘りレンコン

2006年12月2週号

きめ細かい肌、もっちりした歯ごたえ、素晴らしい品質の手掘りレンコン。
特に冬場ものは、貴重な無農薬です。

●農薬空中散布に反対した、気骨ある農家
 関西でなじみのあるレンコンは鳴門産で、関西のシェアの約60%を占めています。レンコンの産地は他に、茨木(土浦)、山口、熊本などにもありますが、別の品種が栽培されています。
 徳島県鳴門市の田村博昭さんと私たちとの出会いは、1988年に発覚し、その後中止に追い込んだ、鳴門レンコン畑への農薬空中散布反対運動のさなかでした。詳しくは『環境監視6号』(1990.12.10 P8「有害無益なレンコン畑への農薬空中散布」)参照。空散推進一色の農協側にあって、田村さんは「レンコン作りは農薬空散がなくてもできる」と勇気ある主張をされた農家だったのです。そのため、農協から迫害を受けた経験もされています。
 この空散問題の起こる10年前より、田村さんは、農薬や化学肥料を多用する農業のあり方に疑問を抱き、それらに頼らない工夫を試みられてきました。農薬を使わないと収穫が上がらない、と農家は信じ込まされているのですが、農薬をまいた日は身体がしんどく、そんな農薬を使うことに苦痛を感じたからです。

●土に咬みつく心、失えばやめる
 農業改良普及員の資格を持っている田村さんは、失敗を重ねながらも工夫の結果、今では市場に出しても最高値で評価される農家となり、有名なホテル・百貨店でも品物が並べられるほどです。しかし、「有名になって市場に踊らされて堕落した農家を多く見てきた」と自分を戒められています。「技術的には毎年1年生である気持ちを忘れないように、無理せずにレンコン作りを続けたい。米作りもしているが、米作りは有機の世界に入ったきっかけであるし、レンコン作りの基本だから続けている」とおっしゃっています。
 田村さんのモットーは、「食べて元気になる食べ物作り」「旬のものを大切に」です。土に咬みつく心、すなわちワクワクする心や執念がなくなればやめるとおっしゃっています。
 市場出荷なら、天気のいい日に仕事をして好きなときに出荷できるのですが、共同購入向けの出荷は、雨でもレンコン掘りをしなければならず、ご苦労をおかけしています。しかし、「いい苗がうまく生育し、いいレンコンが収穫できるとき、喜びを感じる」とのこと。こんなやりがいのある仕事、まだまだお続けになられることでしょう。

田村さんのレンコン
田村さんのレンコンは、市販のものと比べて、
●レンコンの中心のずいが太い。
●あく抜きがいらない。土地が良いのと化学 肥料を使っていないから。
●塩ゆでの時間が短い。
●すりおろしたあと紫色に変色するがない。
●葉っぱを食べてみると、苦くない。
 などの特徴があります。

●栽培方法 
植付・栽培:自家採取した苗は野性化し、細くなるので、苗は購入しています。4~5月に2節植えて、23~25節に成長した9月頃から収穫が始まります。最大の敵は台風で、葉がやられます。
肥料:米ぬか、魚粉、粉炭、緑肥を使っています。これらを使っているので、病害虫の発生が少なくてすみます。亜硝酸態窒素の問題がありますので、動物性堆肥や化学肥料を使いません。
農薬:出荷が始まる9月からの分は、アブラムシにアルフェート乳剤を5月中旬に1回使っています。農協がいうようなジャンボタニシや褐斑病は、とくに問題となりません。2~4月に出荷する冬場ものは、アブラムシにでんぷんで対処することで無農薬栽培を実現しています。
収穫:まずパワーショベルで土を20cmくらい掘り、そのあとはクワで手掘りします。砂地だと「水中掘り」といって水圧のある水で掘ることができますが、粘土質だと「手掘り」になり、労力が4~5倍違います。しかし、日持ちがよく肌もきめ細かくなり、市場価格は倍以上違います。田村さんのレンコンは市場でも最高品質が認められています。
出荷:日持ちのことも考えて、泥付きです。分量は350~450gとしていますが、実際には、それより大きい約500g前後/節のものがいくことが多いです。出荷時期は9月~4月の間で、なくなれば出荷を打切ります。今年の出来は春頃の天候異常が響いて、少し完熟度が低いとのことです。

●レンコンは鮮度を争う野菜です
レンコンは貯蔵野菜ではありません。土から掘ると劣化が早いので、届いたら早めにお召し上がり下さい。

●料理
●すりおろしたレンコンをたまご、小麦粉に混ぜて油揚げし、ポン酢で食べる。おいしいからといって食べ過ぎないように。薬効成分が強いので、控えめにする方がよいでしょう。
●煮物、天ぷら、さっと湯に通して酢レンコンにも。
●田村さんのレンコンなら皮をむかないで、皮のまま食べても大丈夫です。エキスがとっても価値があるので、汁を大切に食べましょう。干しレンコンになると、相対的価値は低下してしまいます。
●また芽や節と節の間の狭いところが薬効成分がとくに豊富です。

●レンコンの薬効
レンコンには下記のような薬効があることが知られており、漢方薬の研究もしていた徳川家康も、その薬効に注目していたそうです。
レンコンの薬効は、古くから知られている。心臓の働きを強化し、血圧を調整する作用があり、消化力を増し渇きを止め、下血、鼻血などにもよく、補血、強精作用も著しい。肺結核、喀血、喘息、咳止めなどに著しい効果がある。夜尿症、浮腫、腎臓病、老衰、下痢、風邪、止血、悪酔い、鼻づまりなどその他枚挙にいとまがない。(「病人のための食養生の実際」東条百合子著より)。

●市販のレンコンの問題点
農薬を使っていること、化学肥料を多用していますので、苦く、まずいことが多いのです。禁止されているはずの漂白もまだ一般に行われている可能性があります。また、中国あたりの輸入物が外食産業を中心に出回っており、驚くほどまずいのですが、鮮度だけの問題ではなさそうです。

ー文責 西川栄郎(オルター代表)ー

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