お正月のお屠蘇は三河みりんで
2006年12月5週号


昔からの伝統的な造り方と
日本の水田を守る、三河みりん。
今ではたいへん珍しくなった本物のみりんです。

●12月の三河みりんはプレゼント付

 古書に「密淋酒」「美淋酒」「美淋酎」と記され、500年もの昔から醸造されてきたみりんは世界に誇るべき日本発のお酒です。かつては、ほんのり淡い甘口の高級酒として、特に女性に愛飲されていました。
 このみりんに、風邪を防ぎ胃腸・肝臓を強化する薬草が調合されている漢方の「屠蘇散」を入れて、健康を願ってお正月に飲むのが、本来の「お屠蘇」です。12月にお届けする三河みりんには「屠蘇散」が付いてきます。この正月は三河みりんで伝統的なお屠蘇を楽しんでみませんか。

●おいしい料理は、おいしい調味料から
 巷にあふれている「みりん風調味料」「発酵調味料」、或いは「本みりん」や自然食品店で売られている「味○○」などと、三河みりんを飲み比べてみてください。三河みりん以外は、まともに飲用に適さない不味いものである事にお気付きになる筈です。このような不味い調味料を使って美味しい料理を作るのは無理な事です。
 みりんの伝統的な造り方は、清酒粕や米を使う高級な「粕取焼酎」の中に、「もち米」と「米こうじ」を仕込んで造ります。いわば焼酎の中で常温でじっくりともち米を甘酒にしたようなお酒です。このような造り方を守る蔵は、今では角谷文治郎商店などごく少数にしかありません。
 三河みりんは1年以上熟成して出来上がりますが、市販の本みりんは糖類やアルコールで増量して2~3ヶ月で造られ、みりん風調味料に至っては糖類や化学調味料などを混合するだけで作られています。残念ながらみりん業界もニセモノであふれているのです。

●百人のうち一人でも、本物がわかる人の為に
 角谷文治郎商店は明治43年創業。水の良さと温暖な気候に恵まれて醸造業のたいへん盛んな愛知県三河地方にあります。初代(祖父)と先代(父)が文治郎さんで、三代目当主が角谷利夫さん。4人の兄弟が力を合わせて、伝統のみりん造りを守っています。
 利夫さんが31才で跡継ぎとなった頃、世間では化学調味料が拡大し始めた頃で、このままではみりんが要らなくなる時代がくるかも、と思った時がありましたが、今では化学調味料の味には限界がある、本物のみりんがやがて見直されると確信をお持ちです。みりん業界がスーパーの扱うみりん風調味料を意識し、それに対抗して価格競争に巻き込まれ、どんどん品質を低下させた結果、角谷さんのみりんの品質が際立っているのです。角谷さんは「百人のうち一人でも、本物がわかる人の為に造り続けたい」と話されます。
 角谷さんは、国内産のもち米やこうじ用うるち米にこだわっています。日本の水田の緑を守りたいからです。「単なる食糧なら外国の米を扱い、外国の緑を守る事でもいいかもしれませんが、日本の夏涼しい緑、水源涵養、村祭りなどの文化、風景など水田の環境効果を考えるから、国産の原料でみりんを造り続けるのです」と語っておられます。

●健康的な甘さ、プロも絶賛の品質
 三河みりんの旨さの秘密は、こうじの力でいかにもち米の旨さを引き出すか、という事にロマンを感じて製造技術を工夫している事です。もち米とこうじを使って形だけ醸造を真似るのは誰にでも出来る事です。良質の原料とその素晴らしさを引き出す技術が、キレ味のよい甘さの秘訣です。
 三河みりんはただ甘いだけでなく、旨味のバランスがとれていて、あまり自己主張せずに他の材料の持ち味を引き出します。三河みりんの甘さの成分は、ブドウ糖とオリゴ糖です。白砂糖のように体に害を与えませんので、健康的な甘味として料理の強い味方です。
 その品質の高さゆえに、私たち本物を求める消費者団体は勿論、味に厳しいプロの料理人たちの間でも絶大な評価を得ています。全国酒類調味食品品評会において度重なる受賞をし、みりん部門ではただ一社ダイヤモンド賞を受賞しています。テレビの「どっちの料理ショー」や多くの雑誌でも話題になっています。

 私(代表)との出会いは約30年前、仲間の消費者団体からの紹介でした。

(株)角谷文治郎商店の三河みりん
●原料
「三州三河みりん」
もち米…国産(佐賀県産)、うるち米(米こうじ用)…国産(愛知県産)、本格焼酎…国内産米使用、自家製造。配合比はもち米9:米こうじ1:本格焼酎6。
「自然農法産米仕込み 三州味醂」
もち米・うるち米(米こうじ用)・本格焼酎…国内産有機栽培米100%。認証団体はNPO法人日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)。生産者は高橋剛(山形県真室川町)、池田賢一・聡士(山形県八幡町)。
「三州柳かげ」
原料は「三州三河みりん」と同じ。より飲用に向くよう、仕込み当初より焼酎歩合を大きくして造っています。

●製造工程
【本格焼酎製造工程(自家製造)】
①うるち米(粳米)を清酒仕込み②圧搾して「原酒」と「清酒粕」に分ける③原酒と清酒粕を蒸留(単式蒸留法)して、「米製焼酎」と「酒粕取焼酎」に。この両方を仕込み用焼酎として使います。
【米こうじ製造工程】
①うるち米(粳米)を精米→洗米→浸漬→蒸米→放冷→種つけ②製麹
【みりん製造工程】
①もち米(糯米)を精米→洗米→浸漬→蒸米→放冷②自家製本格焼酎に、上記もち米と米こうじを仕込む。60~90日間。仕込んだばかりの醪(もろみ)はまったく汁気がないが、3週間ほど経過すると表面に黄色みを帯びた汁が浮いてくる。この時期に1回目の櫂(かい)入れをして撹拌。その後7~10日に一度の割合で櫂入れ。③搾り。みりん粕は奈良漬けなどの原料として使われます。④熟成(200日以上)⑤ビン詰め。加熱殺菌せず生のまま詰めるため酵素が生きています。キレの良い上品な甘さと濃厚な味わい、味のふくらみ、コクがあります。

●使い方
●調味料として
 料理にコクと旨み、照り・つや等を与えます。 だし汁や肉・魚の生臭さを消す作用も。みり んを用いた魚料理は冷めてもおいしく食べら れるということで、配膳するのに調理場から お座敷まで距離の長い料亭で調味料として 使われ始めたとのことです。割烹料理の隠し 味にふさわしい風味です。
●飲み物として
 正月用お屠蘇として。三河みりんに屠蘇散を 入れて「お屠蘇」ができます。12月中は屠蘇 散プレゼントが付いています(柳かげには付 いていません)。
●食前酒として
 三河みりん2:梅酒1のカクテル
●食後酒として
 清酒2:三河みりん1に国産レモンをしぼって。
●三河みりんを使った梅酒作り
 通常の氷砂糖と安物の焼酎を使ったものより 経済的で、とても芳醇な果実酒ができます。 無農薬の梅800gを三河みりん1.8リットル に漬けるだけです。砂糖も不要です。ぜひお 試しをおすすめします。
 
●保存期間
常温12カ月ですが、その後も腐敗・酸敗することはありません。多少色が濃くなり、甘さが少なくなりますが、旨味は増してきます。

●市販のみりんもどきの問題点●
最も一般的なのは「みりん風調味料」です。水飴(遺伝子組み換え、ポストハーベスト農薬)やブドウ糖またはデンプン質の糖化液に、グルタミン酸ソーダを中心とする化学調味料やアミノ酸液(発がん性のおそれ)、酸味料、香料などを混合して作ります。さらに、雑穀(ポストハーベスト農薬)を原料に糖化・アルコール発酵した調味液にアルコールと塩を加えたものもあります。粘りつく甘さや重い味が残る単調な味が特徴。まったく飲めるものではなく、開栓後カビが生え易いです。
 「発酵調味料」は、清酒を造る途中で食塩を添加し、さらに本みりんに似せるために糖液、アルコール類その他の添加物を加え、成分を調整しています。タイなど国外で一次加工した安いもろみを輸入し、みりんに似せた「味○○」といったものが自然食品店などにも並べられているので要注意です。
 標準的な「本みりん」にも問題があります。蒸したもち米と米こうじは使っていますが、アルコールや水飴を加え、香味を調整して2~3カ月で造ります。米1.5kgから4.5~7.2リットルと、3~4倍に増量されています。甘すぎて飲みにくい味です。
 これらは粗悪でおいしくないだけでなく、ポストハーベスト農薬、遺伝子組み換え、食品添加物などの心配があり問題です。

ー文責 西川栄郎(オルター代表)ー

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